営業でこれだけ頑張っているのに給料が上がらない…!転職を考えているけど、不動産営業ではどれくらいインセンティブをもらえるのか知りたい…!このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
不動産営業という職種は、基本給とインセンティブ(歩合給)で構成される給与体系が一般的です。成果を出せば出すほど収入が増える仕組みであり、理論上は「頑張り次第で収入が青天井」と言われています。
しかし現実には、インセンティブの仕組みや相場がわからず、自分がどれくらい稼げるのか、また現在の収入が適正なのかを判断できないという方が多くいます。
私は不動産業界で30年間営業に携わり、営業マンとして15年、営業マネージャーとして15年の経験を積んできました。トップセールスとして業績を残しただけでなく、数百名の営業マンを指導し、多くの成功者を輩出してきました。
この記事では、不動産営業のインセンティブの相場や計算方法という基本情報から、インセンティブを最大化するためのトップセールスの思考法や具体的な営業テクニックまで、包括的に解説していきます。
これらの知識を身につければ、単に「相場」を知るだけでなく、実際に高いインセンティブを獲得するための実践的なスキルも手に入れることができるでしょう。
- 不動産営業のインセンティブの相場と計算方法
- インセンティブを最大化するためのトップセールスの思考法
- 具体的にインセンティブを引き上げる営業テクニック
- 不動産営業で年収1000万円を超えるためのキャリアパス
1.不動産営業のインセンティブ相場と計算方法
インセンティブについて考える前に、まずは不動産営業のインセンティブ制度や相場、計算方法について正確に理解することが大切です。この基礎知識があってこそ、自分の現状が業界標準と比べてどうなのかを客観的に判断できるようになります。
1-1.不動産営業のインセンティブ制度とは
不動産営業のインセンティブとは、営業成績に応じて支給される報酬のことです。固定給に加えて支給されるケースと、完全歩合制でインセンティブだけが収入となるケースがあります。
インセンティブ制度には大きく分けて次の3つの給与体系があります。それぞれの特徴を理解しておくことで、自分に合った働き方や会社を選ぶ際の判断材料になります。
まず「固定給のみ」の場合は、営業成績に関わらず一定の給与が保証されるため、収入の安定性は高いのですが、頑張って成果を上げても給与に反映されにくい傾向があります。
次に「固定給+インセンティブ」は、最も一般的な給与体系で、基本給という安定収入を確保しながら、成果に応じた報酬も得られるバランスの取れた形態です。新卒や第二新卒で不動産業界に入る方の多くは、この給与体系の会社に就職することが多いでしょう。
最後に「完全歩合制(インセンティブのみ)」は、固定給がなく、成果に対してのみ報酬が支払われる形態です。リスクは高いものの、高い営業力があれば大きな収入を得るチャンスがあります。経験を積んだベテラン営業や、自信のある方が選ぶことが多い給与体系です。
1-2.不動産営業のインセンティブ相場
不動産営業のインセンティブ相場は、一般的に仲介手数料の5〜15%程度とされています。高いところでは20%に達することもあります。
例えば、3,000万円の不動産売買で仲介手数料が3%+6万円とすると、手数料は96万円になります。このうちインセンティブが10%だとすると、営業マン個人には9.6万円が支給される計算です。
以下の表は、不動産営業の主な給与体系とインセンティブ相場をまとめたものです。自分の現状と比較する際の参考にしてください。
給与体系 | インセンティブ相場 | 特徴 |
---|---|---|
固定給のみ | なし | 安定性は高いが、成果が給与に反映されにくい |
固定給+インセンティブ | 仲介手数料の5~15% | 最も一般的な給与体系。安定性と成果報酬のバランスが取れている |
完全歩合制 | 仲介手数料の15~20% | 固定給はないが、高成績なら高収入が期待できる |
厚生労働省の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」によると、住宅・不動産営業職の全国平均年収は約579.5万円となっています。このうち固定給とインセンティブの割合は会社によって異なりますが、総支給額の20〜50%がインセンティブである場合が多いでしょう。
不動産営業の平均年収が約580万円というデータは、インセンティブがあることで他の職種と比べても遜色ない収入を得られることを示しています。しかし、トップセールスになれば年収1,000万円を超えることも十分可能な業界でもあります。
1-3.インセンティブの計算方法と具体例
不動産営業のインセンティブ計算方法は、会社によって異なりますが、基本的には以下の3つのパターンが一般的です。
- 売上に対して一定の歩合率をかける方法
- 目標達成率に応じて歩合率が変わる方法
- 売上に応じて段階的に歩合率が上がる方法
それぞれの計算方法を表で比較してみましょう。同じような売上額でも、計算方法によってインセンティブの金額が大きく変わることがわかります。
計算方法 | 適用例 | 計算式 | インセンティブ額 |
---|---|---|---|
一定の歩合率 | 月の売上: 500万円 歩合率: 10% |
500万円 × 10% | 50万円 |
目標達成率に応じた歩合 | 目標: 500万円 実績: 600万円(達成率120%) 基本歩合率: 10% ボーナス: +2% |
600万円 × 12% | 72万円 |
段階的歩合率 | 売上: 700万円 ~300万円: 8% ~500万円: 10% 500万円超: 15% |
300万円×8% + 200万円×10% + 200万円×15% | 74万円 |
それでは、それぞれの計算方法について具体例を交えて詳しく見ていきましょう。
売上に対して一定の歩合率をかける方法
一つ目の「売上に対して一定の歩合率をかける方法」は最もシンプルな計算方法です。例えば、月の売上が500万円で歩合率が10%の場合、50万円のインセンティブが支給されます。この方法はわかりやすいものの、成績の良い営業マンと平均的な営業マンの差が出にくい面があります。
目標達成率に応じて歩合率が変わる方法
二つ目の「目標達成率に応じて歩合率が変わる方法」は、個人に設定された目標の達成度合いによって歩合率が変動します。例えば、目標が月500万円の売上で、実績が600万円(達成率120%)だった場合、基本歩合率10%に加えて2%のボーナス歩合が加算され、合計12%の72万円がインセンティブとして支給されるといった形です。
売上に応じて段階的に歩合率が上がる方法
三つ目の「売上に応じて段階的に歩合率が上がる方法」は、売上額に応じて適用される歩合率が変わります。例えば、月の売上が300万円までは歩合率8%、300万円超〜500万円までは10%、500万円超は15%といった具合です。この場合、売上700万円の営業マンは、300万円分が8%で24万円、200万円分が10%で20万円、200万円分が15%で30万円、合計74万円のインセンティブとなります。
この計算方法は、高い売上を上げるほど多くのインセンティブが得られる仕組みになっており、トップセールスを目指す方にとって魅力的です。
1-4.職種別のインセンティブ比較
不動産営業と一言で言っても、賃貸仲介、売買仲介、新築分譲、投資用物件販売など様々な職種があります。それぞれの特徴とインセンティブの違いを理解することで、自分に合った職種を選ぶことができます。
以下の表は、不動産営業の主な職種別にインセンティブの特徴をまとめたものです。自分の目標や強みに合った職種を選ぶための参考にしてください。
職種 | 一件あたりの インセンティブ目安 |
特徴 | 向いている人 |
---|---|---|---|
賃貸仲介 | 5,000円~2万円 | ・取引数が多い ・比較的短期間で成約 ・顧客単価が低い |
・コツコツと数をこなせる人 ・初心者や若手 |
売買仲介 | 5万円~20万円 | ・一件あたりの金額が大きい ・成約までに時間がかかる ・交渉力が必要 |
・粘り強さがある人 ・コミュニケーション能力が高い人 |
新築分譲 | 30万円~100万円 | ・大型プロジェクトに関わる ・販売期間が限られている ・商品知識が重要 |
・プレゼン能力が高い人 ・計画的に動ける人 |
投資用物件販売 | 50万円~300万円 | ・一件あたりの金額が非常に大きい ・専門知識が必要 ・顧客は投資家や法人が多い |
・財務や税務の知識がある人 ・論理的思考ができる人 ・キャリア中期以降 |
まず「賃貸仲介」は、一件あたりの取引金額が比較的小さいため、インセンティブも少額になりがちです。しかし、取引数を増やせば安定した収入を得ることが可能です。一般的に家賃0.5〜1ヶ月分の仲介手数料の5〜10%程度がインセンティブとなります。
次に「売買仲介」は、一件あたりの取引金額が大きいため、インセンティブも高額になります。売買仲介手数料(物件価格の3%+6万円が上限)の5〜15%がインセンティブとなることが多いです。
「新築分譲」は、デベロッパーが開発した物件を販売する仕事で、一件あたりの販売インセンティブは30〜100万円程度と高額です。ただし、販売期間が限られていることもあり、安定性という点ではやや劣ります。
「投資用物件販売」は、収益不動産を投資家に販売する仕事で、一件あたりの取引金額が非常に大きいため、インセンティブも高額になります。物件価格の0.5〜2%程度がインセンティブとなるケースが多く、一件の成約で数十万円から数百万円のインセンティブを得ることも可能です。
このように、職種によってインセンティブの金額や計算方法は大きく異なります。高額なインセンティブを求めるなら投資用物件販売や新築分譲、安定性を求めるなら賃貸仲介を選ぶといった具合に、自分の目標や強みに合わせて職種を選ぶことが重要です。
2.インセンティブを最大化するためのトップセールスの思考法
インセンティブの仕組みや相場を知ることは大切ですが、それだけでは実際の収入は増えません。ここからは、インセンティブを最大化するためのトップセールスの思考法について解説していきます。私が30年間の不動産営業生活で培った経験に基づく、実践的なノウハウをお伝えします。
2-1.インセンティブを増やすための3つの考え方
インセンティブを増やすためには、「売上を増やす」というシンプルな答えしかありません。しかし、その売上を増やすための考え方には、いくつかの重要なポイントがあります。以下の3つの考え方を身につけることで、インセンティブの最大化に近づくことができます。
- 効率重視の時間管理
- 顧客の潜在ニーズへの集中
- 長期的な信頼関係の構築
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
効率重視の時間管理
不動産営業において、時間は最も貴重な資源です。特に顧客との接客時間は限られているため、その時間をいかに効率的に使うかが成功の鍵となります。トップセールスは、顧客を見極め、成約の可能性が高い顧客に集中的に時間を使います。
具体的には、初回の接客で顧客の本気度や予算を見極め、購入意欲の低い顧客に時間を費やすのではなく、成約可能性の高い顧客に全力を注ぎます。これにより、限られた時間の中で最大の成果を上げることができるのです。
顧客の潜在ニーズへの集中
顧客が口にするニーズ(顕在ニーズ)と、真に求めているもの(潜在ニーズ)には大きな違いがあります。例えば、顧客が「静かな環境の物件」と言っていても、本当は「安心して子育てできる環境」を求めているかもしれません。
トップセールスは、表面的な要望にとらわれず、顧客との対話を通じて潜在ニーズを引き出し、それに応える提案をします。これにより、顧客満足度が高まり、成約率が向上します。
長期的な信頼関係の構築
不動産取引は人生でも大きな買い物であり、顧客は信頼できる営業マンからしか購入したいと思いません。トップセールスは、短期的な売上だけを追求するのではなく、顧客と長期的な信頼関係を構築することを重視します。
具体的には、顧客にとって最適な提案を行い、時には「この物件はお客様に合わないのでお勧めできません」と正直に伝えることもあります。このような誠実な対応が信頼を生み、リピート購入や紹介につながり、結果的に大きなインセンティブを得ることにつながるのです。
2-2.営業成績と心理状態の関係性
不動産営業において、心理状態が営業成績に大きく影響することは間違いありません。ポジティブな心理状態は好循環を生み、ネガティブな心理状態は悪循環を引き起こします。
トップセールスは、常に自分の心理状態をポジティブに保つことに努めています。これは単なる「ポジティブシンキング」ではなく、科学的な根拠に基づいたアプローチです。
例えば、ある研究によると、ポジティブな心理状態にある営業マンは、ネガティブな心理状態にある営業マンと比べて、同じ状況でも成約率が30%以上高いという結果が出ています。これは、ポジティブな心理状態が顧客との良好なコミュニケーションを促進し、信頼関係の構築に寄与するためです。
トップセールスが実践している心理状態管理の方法としては、毎朝の自己肯定的な宣言(アファメーション)、成功体験の定期的な振り返り、失敗を学びの機会と捉える思考習慣などがあります。
また、営業成績が低迷している時こそ、心理状態を意識的にポジティブに保つことが重要です。なぜなら、営業成績の低迷はネガティブな心理状態を引き起こし、それがさらに営業成績を悪化させるという悪循環に陥りやすいからです。
トップセールスは、そのような時でも「この経験が次の成功につながる」「失敗から学べることがある」といったポジティブな解釈を意識的に行います。これにより、悪循環を断ち切り、再び成功への道を歩み始めることができるのです。
2-3.トップセールスが意識している目標設定法
目標設定は、インセンティブを最大化するうえで極めて重要な要素です。トップセールスは、効果的な目標設定によって常に高いパフォーマンスを維持しています。
トップセールスが実践している目標設定法の核心は、「具体的で、測定可能で、達成可能で、関連性があり、期限付きの目標」を設定することです。これはSMART目標と呼ばれる手法で、漠然とした目標ではなく、具体的な行動に落とし込みやすい目標を設定します。
例えば、「もっと売上を上げる」という漠然とした目標ではなく、「今月は新規接客10件、成約2件を目指し、売上2,000万円を達成する」といった具体的な目標を設定します。
さらに、トップセールスは目標を短期・中期・長期に分けて設定します。日々の行動目標、月間の成果目標、年間のキャリア目標などを明確にし、それらを有機的に連携させることで、日々の行動に一貫性と方向性を持たせます。
また、目標は定期的に見直し、達成状況や環境変化に応じて調整することも大切です。トップセールスは、目標を固定的なものではなく、常に最適化すべき道しるべと捉えています。
さらに、目標達成のための行動計画を立てることも欠かせません。「何を」達成するかだけでなく、「どのように」達成するかを具体的に計画することで、目標に向けた一貫した行動が可能になります。
例えば、「毎日朝一番に見込み客に5件の電話をする」「週に2回は物件の下見に行く」「月に1回は業界セミナーに参加して知識をアップデートする」といった具体的な行動計画を立てます。
このような目標設定と行動計画により、トップセールスは常に明確な方向性を持って行動し、結果として高いインセンティブを獲得しているのです。
3.インセンティブを引き上げる5つの営業テクニック
インセンティブを最大化するための思考法を学んだところで、次はその思考法を実践に移すための具体的な営業テクニックについて解説していきます。ここからお伝えする5つのテクニックは、私が30年間の営業経験の中で、最も効果的だと実感してきたものばかりです。
3-1.初回接客での信頼関係構築法
不動産営業において、初回接客は極めて重要です。なぜなら、顧客の9割は初回接客の時点で購入を決断するからです。
初回接客で信頼関係を構築するためには、以下の3つのポイントが重要です。
- いきなり本題に入り、真のニーズを把握する
- 第一印象を大切にし、身だしなみに気を配る
- 親に接するような誠実さを持って対応する
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
いきなり本題に入り、真のニーズを把握する
初回接客で重要なのは、雑談や世間話に多くの時間を割くのではなく、いきなり本題に入ることです。「本日は何のために来店されましたか?」と直接尋ねることで、顧客の真のニーズを早期に把握できます。
このアプローチにより、顧客も「この営業マンは時間を無駄にしない」と感じ、信頼感が生まれます。また、限られた時間を有効に使うことで、より多くの重要な情報を引き出すことができます。
第一印象を大切にし、身だしなみに気を配る
初回接客での服装や身だしなみにも気を配りましょう。第一印象は数秒で決まり、その後の商談に大きな影響を与えます。清潔感のある服装、きちんとした髪型、爪の手入れなど、細部まで注意を払うことが重要です。
実際、ナポレオンも「人は、まとった制服のしもべになる」と語っています。プロフェッショナルな身だしなみは、自分自身の自信にもつながり、顧客からの信頼を獲得しやすくなります。
親に接するような誠実さを持って対応する
顧客に対して「親」に接するような誠実さを持つことも大切です。「あなたにとって本当に良いことは何か」という視点で接することで、顧客の信頼を獲得できます。具体的には、「正直に言うと、この物件はあなたには合わないと思います」と勇気を持って伝えることも必要です。
このような誠実なアプローチが、初回接客での信頼関係構築につながり、結果としてクロージング率の向上、そしてインセンティブの増加へとつながります。
3-2.競合との差別化を図るスペック表の活用
不動産営業において、競合他社との差別化は成功の鍵です。その強力なツールとなるのが「スペック表」です。
スペック表とは、自社物件と競合物件の特徴を客観的に比較できる資料のことです。この表を効果的に活用することで、自社物件の優位性を客観的に示すことができます。
スペック表作成のポイントは、自社物件が優位に立てる項目を中心に作成することです。例えば、断熱性能、耐震性、アフターサービスなど、自社の強みを具体的な数値やデータで示します。
また、スペック表は印刷された資料だけでなく、商談中にその場で手書きで作成することも効果的です。手書きのスペック表は、顧客にとって「この営業マンは私のために特別に作ってくれた」という印象を与え、信頼感を高める効果があります。
スペック表を使った説明の際には、「これが業界標準です」「一般的にはこのような仕様が主流です」といった表現を使うことで、顧客の判断基準を設定することができます。そのうえで自社物件の優位性を示せば、顧客は自然とあなたの提案に納得するでしょう。
このようにスペック表を活用することで、競合との差別化を図り、成約率を高めることができます。
3-3.顧客心理を読み解くヒアリング術
顧客の真のニーズを理解するためには、効果的なヒアリングが不可欠です。ここでは、顧客心理を読み解くためのヒアリング術を紹介します。
効果的なヒアリングの基本は、「観察→仮説→ヒアリング→提案」のサイクルです。まず顧客の服装や持ち物、言動などを観察し、仮説を立てます。例えば、高級腕時計をしている顧客には「品質や社会的ステータスを重視しているのでは」という仮説を立てます。
次に、その仮説を確認するためのヒアリングを行います。「素敵な時計をされていますね。品質にこだわりをお持ちなのでしょうか?」といった質問です。このように褒め言葉から入ることで、顧客は警戒心を解き、率直に答えやすくなります。
ヒアリングでは、顧客の発言に含まれる感情的なキーワードに注目しましょう。「安心」「快適」「自慢」といった言葉は、顧客の潜在的なニーズを示しています。これらのキーワードを拾い上げ、提案に活かすことが重要です。
また、「もし〜だったら、どうしますか?」という仮定の質問も効果的です。例えば「もしこの物件が予算内で購入できるとしたら、決断されますか?」といった質問です。これにより、顧客の優先順位や本音を引き出すことができます。
このようなヒアリング術を駆使することで、顧客の真のニーズを理解し、的確な提案ができるようになります。結果として成約率が高まり、インセンティブの増加につながるのです。
3-4.クロージングまで一気に進める話法
不動産営業の成功は、いかに効果的にクロージング(成約)まで導けるかにかかっています。ここでは、初回接客からクロージングまで一気に進めるための具体的な話法を紹介します。
クロージングを成功させるための効果的な話法には、以下の4つのテクニックがあります。
- 小さなYESを積み重ねる質問法
- 予算や資金計画の早期確認
- 「契約」という言葉の効果的な使用
- 希少性の演出
それぞれのテクニックについて詳しく解説します。
小さなYESを積み重ねる質問法
クロージングへの第一歩は、顧客に「小さなYES」を積み重ねてもらうことです。例えば、「この立地は通勤に便利ですね」と問いかけ、顧客に「はい」と答えてもらう。次に「お子さんの学校にも近いですね」と続け、また「はい」と答えてもらう。
このように小さな合意を積み重ねることで、最終的な大きな「YES」(契約)へとスムーズに導くことができます。顧客の心理として、一度同意した内容と矛盾する決断をするのは難しいという特性があります。
予算や資金計画の早期確認
早い段階で予算や資金計画について確認することも重要です。「予算はどのくらいをお考えですか?」「頭金はどのくらいご用意されていますか?」といった質問を遠慮なく行いましょう。
これにより、顧客の購買能力を把握し、無駄な提案を避けることができます。また、予算を超える物件を提案する場合でも、具体的な資金計画を示すことで、顧客が現実的に検討できるようになります。
「契約」という言葉の効果的な使用
「契約」という言葉を効果的に使うことも重要です。初回接客の中で、軽いトーンで「契約ですね?」と冗談交じりに使うことで、顧客の心理的ハードルを下げる効果があります。
これにより、顧客の中で「契約」という言葉への抵抗感が薄れ、実際の契約の際にスムーズに進めることができます。ただし、しつこく使用すると逆効果になるので、タイミングを見極めましょう。
希少性の演出
「期間限定」「数量限定」といった希少性を伝えることも効果的です。「この物件は今週末までの特別価格です」「この立地の物件は年間でも数件しか出ないんですよ」といった表現により、顧客の決断を促すことができます。
人は失うことへの恐れが強い生き物です。良い機会を逃してしまうという「損失感」を避けるために、決断を早める傾向があります。このような心理特性を理解し、適切に活用することがクロージングを成功させるコツです。
このような話法を駆使することで、初回接客からクロージングまで一気に進め、効率的に成約を獲得することができるのです。
3-5.契約後のフォローで紹介を増やす方法
営業成績を安定して伸ばしていくためには、一度の契約で終わらせるのではなく、顧客からの紹介を増やすことが重要です。ここでは、契約後のフォローで紹介を増やすための具体的な方法を紹介します。
紹介を増やすための効果的なフォロー方法は以下の4つのステップで考えることができます。
- 契約は終わりではなく始まりという意識を持つ
- 定期的なフォロースケジュールを組む
- パーソナライズされたフォロー内容を心がける
- 紹介のお願いは最適なタイミングで行う
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
契約は終わりではなく始まりという意識を持つ
契約後のフォローで最も重要なのは、契約は終わりではなく始まりと考えることです。契約後こそ、顧客との信頼関係を深める絶好の機会だからです。
多くの営業マンは契約が終わると次の顧客獲得に意識が向きがちですが、既存顧客をケアすることで紹介という形の新規顧客獲得につながります。また、リピート購入の可能性も高まるため、長期的な顧客価値の向上にも貢献します。
定期的なフォロースケジュールを組む
具体的なフォロー方法として、まず入居後または引き渡し後の1週間以内に電話やメールで連絡を取り、満足度を確認しましょう。「何か不便なことはありませんか?」「困っていることはありませんか?」と尋ね、問題があれば迅速に対応します。
その後も、1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後と定期的に連絡を取り、長期的な関係を維持します。季節の変わり目や記念日にメッセージを送ることも効果的です。このような定期的なフォローが、「この営業マンは本当に私のことを考えてくれている」という印象を強め、紹介につながります。
パーソナライズされたフォロー内容を心がける
顧客の家族構成や趣味、記念日などの情報をデータベース化し、パーソナライズされたフォローを行いましょう。例えば、子どもの入学時期に「おめでとうございます」のカードを送るなどです。
また、顧客の関心事に合わせた情報提供も効果的です。不動産投資に興味がある顧客には投資セミナーの案内を、DIYが趣味の顧客にはリフォームイベントの情報を送るなど、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを心がけましょう。
紹介のお願いは最適なタイミングで行う
紹介をお願いする際は、タイミングが重要です。顧客が満足している瞬間、例えば問題を解決した直後や、感謝の言葉をいただいた時に、「お知り合いで住まいをお探しの方がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介ください」と自然な形でお願いしましょう。
また、「今月は紹介キャンペーンをしていて、ご紹介いただいた方にも特典がございます」など、具体的なメリットを示すことで、紹介意欲が高まります。ただし、あまりにしつこく紹介をお願いすると、顧客との関係性が悪化する可能性があるので注意が必要です。
このような丁寧なフォローにより、顧客からの信頼を獲得し、紹介による新規顧客の獲得へとつなげることができます。結果として、営業効率が高まり、インセンティブの増加につながるのです。
4.不動産営業で年収1000万円を超えるためのキャリアパス
ここまで、インセンティブを増やすための思考法や具体的な営業テクニックについて解説してきました。これらを実践すれば、確実に収入は増えていくでしょう。しかし、さらに一歩進んで、不動産営業で年収1000万円を超えるためのキャリアパスについても考えていきましょう。実際に高収入を実現するためには、自分自身のキャリアを戦略的に設計することも重要だからです。
4-1.年収アップに効果的な3つの転職基準
不動産営業として年収を大きく向上させるためには、現在の環境が最適かどうかを客観的に評価し、必要であれば転職を検討することも重要です。ここでは、年収アップに効果的な転職基準を3つ紹介します。
- 市場性の高いエリアや物件を扱っている会社であること
- インセンティブ制度が明確で高い歩合率を提供していること
- 教育体制や営業支援が充実していること
それでは、それぞれの基準について詳しく見ていきましょう。
市場性の高いエリアや物件を扱っている会社であること
不動産市場は地域や物件タイプによって大きく異なります。東京や大阪などの大都市圏や、再開発が進む地域では取引量が多く、高額物件も多いため、必然的にインセンティブも高くなります。
例えば、地方の賃貸仲介会社より、都心の売買仲介会社の方が、一般的に高い収入を期待できます。同様に、ファミリー向け物件より投資用物件を扱う会社の方が、一件あたりの取引金額が大きく、結果としてインセンティブも高額になることが多いです。
インセンティブ制度が明確で高い歩合率を提供していること
転職を検討する際は、インセンティブの計算方法や歩合率を詳細に確認することが重要です。
一般的に、仲介手数料の15〜20%の歩合率を提供している会社は、業界内では高水準と言えます。また、売上に応じて歩合率が上がる仕組みや、目標達成時のボーナスインセンティブがあるかどうかも重要なポイントです。
教育体制や営業支援が充実していること
高いインセンティブを得るためには、自身の営業スキルを継続的に向上させることが不可欠です。そのため、社内研修やOJTが充実している会社を選ぶことが重要です。
また、営業支援体制も重要なポイントです。例えば、契約書作成や重要事項説明などの事務作業を専門スタッフがサポートしてくれる環境であれば、営業マンは営業活動に集中でき、より多くの成約を獲得できます。
これらの3つの基準を満たす会社であれば、年収1000万円を超える可能性は格段に高まるでしょう。
4-2.インセンティブ制度を見極める交渉術
転職や昇進の際には、インセンティブ制度について交渉する場面が出てくることもあります。ここでは、自分に有利なインセンティブ制度を獲得するための交渉術を紹介します。
インセンティブ交渉で最も重要なのは、自分の市場価値を客観的に理解することです。自身の実績、スキル、業界経験、人脈などを整理し、それらがどれだけの価値を持つのかを明確にしましょう。
交渉の際には、具体的な数字を示すことが効果的です。例えば、「前職では年間○件の成約、売上○億円を達成していました」「過去3年間の平均インセンティブは年間○万円でした」といった具体的な実績です。
また、交渉の場では複数の選択肢を提示することも重要です。例えば、「基本給を上げる」「歩合率を上げる」「ボーナスインセンティブを設ける」など、相手が選べる複数の案を出すことで、交渉がスムーズに進みやすくなります。
さらに、段階的な目標と報酬の設定を提案するのも効果的です。例えば、「1年目は基本給重視で安定した収入を確保し、2年目以降は成果に応じて歩合率を上げていく」といった提案です。これにより、会社側も段階的なリスク管理ができ、受け入れやすくなります。
交渉の際には、自分の要求だけでなく、会社側にとってのメリットも明確に示すことが大切です。「私のスキルと経験を活かすことで、御社の○○という課題解決に貢献できます」といった形で、Win-Winの関係性を提案しましょう。
このような交渉術を身につけることで、自分に最適なインセンティブ制度を獲得し、収入の最大化につなげることができます。
4-3.長期的に安定して稼ぐための自己投資
不動産営業で長期的に安定した高収入を得るためには、自己投資が欠かせません。短期的な成果だけを追求するのではなく、継続的に自己成長を図ることが重要です。
長期的な成功につながる自己投資の分野は主に以下の4つです。
- 専門知識への投資
- コミュニケーションスキルへの投資
- 人脈構築への投資
- 健康への投資
それぞれの投資分野について詳しく見ていきましょう。
専門知識への投資
自己投資の第一歩は、専門知識の習得です。不動産関連の法律、税制、金融知識、建築知識など、幅広い分野の知識を身につけましょう。これらの知識があれば、顧客に対してより価値の高い提案ができ、信頼関係の構築につながります。
具体的には、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、マンション管理士などの資格取得を目指すことも効果的です。これらの資格は、顧客に対する信頼性を高めるだけでなく、自身の市場価値も向上させます。また、専門書の購読や業界セミナーへの参加も重要な知識習得の手段です。
コミュニケーションスキルへの投資
不動産営業はコミュニケーション業であり、話し方、聞き方、プレゼンテーション能力などが成約率に直結します。セミナーやワークショップへの参加、本の購読などを通じて、これらのスキルを磨きましょう。
特に、傾聴スキルは不動産営業において最も重要なスキルの一つです。顧客の言葉の背景にある真のニーズを理解するためには、質問力と傾聴力が不可欠です。また、わかりやすく説明する能力も重要です。難しい不動産用語や法律知識を、顧客が理解しやすい言葉に置き換える能力を培いましょう。
人脈構築への投資
人脈構築への投資も重要です。同業者、金融機関、税理士、弁護士などとの信頼関係を築くことで、情報収集や案件紹介などのチャンスが広がります。業界セミナーや交流会に積極的に参加し、人脈を広げていきましょう。
また、地域コミュニティへの参加も効果的です。町内会やPTA、地域のボランティア活動などに参加することで、地域住民との信頼関係を築き、自然な形で営業機会を得ることができます。人脈は一朝一夕に築けるものではないため、長期的な視点で継続的に投資することが大切です。
健康への投資
健康への投資も忘れてはなりません。不動産営業は肉体的にも精神的にもハードな仕事です。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動などで心身の健康を維持することが、長期的なパフォーマンスの維持につながります。
特にメンタルヘルスケアは重要です。営業職は常に成果へのプレッシャーがあり、精神的ストレスが蓄積しやすいものです。適切なストレス管理法を身につけ、定期的にリフレッシュする時間を確保しましょう。健康を損なってしまっては、どんなに高いスキルも発揮できません。
このような多方面への自己投資を継続することで、不動産営業として長期的に安定して高収入を得ることができるでしょう。自己投資は短期的には負担に感じることもありますが、長期的に見れば必ず大きなリターンをもたらします。
おわりに
この記事では、不動産営業のインセンティブ相場と計算方法から始まり、インセンティブを最大化するための思考法、具体的な営業テクニック、そして年収1000万円を超えるためのキャリアパスまで幅広く解説してきました。
不動産営業というのは、単なる「物件を売る仕事」ではありません。顧客の人生の一大イベントを支援する重要な仕事であり、その責任の大きさに見合った収入を得ることができる職業です。
インセンティブ制度は、努力と成果が直接収入に反映されるという点で、やりがいのある制度と言えます。正しい知識と技術を身につけ、継続的に実践することで、誰でも高いインセンティブを獲得することが可能です。
私の30年の経験から言えることは、成功している不動産営業マンには共通点があるということです。それは、顧客の立場に立って考え、誠実に対応し、常に自己成長を続けているという点です。これらを実践することで、あなたも必ず成功への道を歩むことができるでしょう。
最後に、インセンティブはあくまで結果であって目的ではないということを忘れないでください。顧客に真の価値を提供し、信頼関係を築くことを第一に考えれば、高いインセンティブは自然についてくるものです。
この記事が、あなたの不動産営業としてのキャリアにおいて、一助となれば幸いです。
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