営業の場で、お客様との会話がうまく進まずに悩んでいませんか?私は営業歴30年、2000人以上の営業マンを育ててきた経験から、基本的な営業トークの型を知らないために苦労している方が非常に多いことを実感しています。
総務省統計局の調査によると、現在日本の営業職は約880万人。その多くが、会話術の基本を学ぶ機会のないまま現場に出ているのが現状です。
本日は、営業トークの基本となる「さしすせそ」について、具体的な使い方をご紹介します。これは単なる会話のテクニックではなく、お客様との信頼関係を築くための重要な第一歩となります。
▼この記事でわかること
- 「さしすせそ」の正しい使い方
- 効果的な営業トークの具体例
- 初回商談での活用方法
- よくある失敗例と対処法
1.「さしすせそ」を使った営業トークの基本
「さしすせそ」は、お客様との会話をスムーズに進める上で欠かせない基本フレームです。営業経験が長い方でも、このフレームを意識することで、さらに効果的な営業トークができるようになります。
1-1.「さ:さすがですね」の正しい使い方
「さすがですね」という言葉は、お客様の知識や経験を認める重要なフレーズです。ただし、闇雲に使うのではなく、適切なタイミングで使用することが大切です。
お客様の発言に対して「さすがですね」と返すことで、相手の自尊心を満たし、より深い会話へと発展させることができます。例えば、お客様が「最近の市場動向を調べてきました」と言った際に、「さすがですね。事前にしっかり情報収集されているんですね」と返すことで、お客様は自分の行動を評価されたと感じ、より前向きな姿勢で商談に臨んでくれます。
ただし、明らかに誤った認識をお持ちの場合に「さすがですね」と言ってしまうと、後々の信頼関係に大きな影響を与えかねません。お客様の話をしっかりと理解した上で、本当に「さすが」だと感じる部分に対して使用することが重要です。
具体的な使用例を見てみましょう。
【効果的な使用例】

「このエリアの相場観については、以前から調査されていたんですね。さすがですね。では、その相場観を踏まえた上で、私どもの商品の特徴についてご説明させていただいてもよろしいでしょうか?」
このように、お客様の知識や準備を認めた上で、次の商談ステップへと自然に話を進めることができます。これこそが「さすがですね」の本来の使い方なのです。
1-2.「し:知らなかったです」の効果的な活用法
「さすがですね」に続いて重要なのが、「知らなかったです」というフレーズです。このフレーズは、お客様に専門家としての存在感を感じていただき、より詳しい説明をしたくなる心理を引き出すことができます。
しかし、営業マンの多くは「知らないことを認めるのは恥ずかしい」と考え、このフレーズを避けがちです。これは大きな間違いです。「知らなかったです」と素直に認めることで、かえってお客様との信頼関係が深まり、より本音の会話ができるようになります。
例えば、お客様が「この業界では〇〇という課題が一般的なんです」と話された時、

「そうなんですか、その点は知らなかったです。もう少し詳しく教えていただけますか?」
と返すことで、お客様は自分の知識を共有したくなり、より深い会話へと発展していきます。
とはいえ、基本的な業界知識については事前にしっかりと勉強しておく必要があります。「知らなかったです」は、お客様独自の視点や経験に対して使うことで最も効果を発揮します。
1-3.「す:すごいですね」の使用タイミング
「すごいですね」は、お客様の具体的な実績や取り組みを認める際に使用する重要なフレーズです。このフレーズは、お客様が本当に誇れる内容に対して使うことで、強い信頼関係を築くことができます。
「すごいですね」は、具体的な数字や事実を伴う場面で使うと特に効果的です。例えば、

「前年比120%の成長を達成されたんですね。すごいですね。その成長の秘訣をぜひ教えていただけますか?」
というように使います。
ただし、安易に連発すると、逆に営業マンの信頼性を下げてしまう危険性があります。私の経験から、以下のような使用方法を推奨しています。
具体的な使用例を見てみましょう。
【効果的な使用例】

「3年連続で売上目標を達成されているんですね。すごいですね。その実績があるからこそ、今回ご提案させていただく商品の価値をより深くご理解いただけると思います」
このように、お客様の実績を認めた上で、自然な流れで商品提案につなげていくことで、より説得力のある営業トークを展開することができます。
1-4.「せ:センスがありますね」の適切な使い方
「センスがありますね」は、お客様の選択眼や判断力を褒めるフレーズです。このフレーズを適切に使うことで、お客様の自己肯定感を高め、より前向きな商談を進めることができます。
私が長い営業経験で学んだのは、このフレーズは具体的な根拠を添えて使うことが重要だということです。例えば、

「このような視点で商品を選ばれるなんて、センスがありますね。多くのお客様は価格だけで判断されることが多いのですが」
というように、なぜセンスがあると感じたのかの理由を添えることで、より説得力のある褒め言葉になります。
ただし、このフレーズは使い方を誤ると軽薄な印象を与えかねません。特に初対面のお客様に対して安易に使用するのは避けるべきです。
信頼関係がある程度構築された後で、本当にセンスを感じる場面で使用することが大切です。
1-5.「そ:そうなんですか」の戦略的な使用法
「そうなんですか」は、お客様の話に対する関心を示すフレーズです。ある調査によると、効果的な営業トークにおける「話す:聞く」の理想的な比率は43:57とされています。
「そうなんですか」は、この「聞く」という重要な要素を支える基本的なフレーズなのです。
このフレーズは、単なる相槌ではありません。以下のような使い方で、お客様との会話を深めることができます。
【効果的な使用例】

「そうなんですか。それは大変興味深い視点ですね。その点について、もう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか?」
このように、「そうなんですか」の後に、さらに踏み込んだ質問を加えることで、お客様の本音を引き出すきっかけを作ることができます。これこそが、このフレーズの本来の使い方です。
ただし、このフレーズを漫然と繰り返すだけでは、かえって営業マンの誠実さを疑われる原因となりかねません。お客様の話をしっかりと理解した上で、適切なタイミングで使用することが重要です。
2.初回商談で成果を出すためのトーク術
ここまで「さしすせそ」の基本的な使い方をご説明してきました。しかし、これらのフレーズを知っているだけでは、真の成果は望めません。
ここからは、これらのフレーズを実践的に活用し、初回商談で成果を出すための具体的な手法をお伝えします。
2-1.顧客の本音を引き出す質問技法
本音を引き出すには、表面的な会話から一歩踏み込んだ質問が必要です。ただし、踏み込みすぎると警戒されてしまい、かえって本音を聞き出せなくなってしまいます。
そのためには段階的なアプローチを意識することが重要です。以下の4つの流れで進めていきましょう。
- お客様の現状を確認する
- 課題を具体化する
- 解決策を提示する
- 決断を促す
それぞれの流れについて、詳しく解説していきます。
【お客様の現状を確認する】
まずは「現在どのような方法を採用されていますか?」といった質問で、現状を丁寧に把握します。この段階では「さしすせそ」を効果的に使い、お客様が話しやすい雰囲気を作ります。
【課題を具体化する】
次に「その方法で何か課題を感じていらっしゃいますか?」と掘り下げていきます。この時、お客様の言葉を否定せず、「そうなんですか」と共感的に聞くことが重要です。
【解決策を提示する】
課題が明確になったところで、「その課題に対して、このような解決策はいかがでしょうか」と提案します。この時、「なぜこの解決策が最適なのか」という理由も添えます。
【決断を促す】
最後に「このような効果が期待できますが、いかがでしょうか?」と、自然な流れで決断を促します。
このような段階的なアプローチを意識することで、スムーズな商談の流れを作ることができます。
2-2.タイミングを見極めた商品提案
商品提案のタイミングは、お客様の発言や態度から見極めます。具体的には、お客様が自分の課題や悩みを詳しく話し始めた時が、最適なタイミングです。この時点で、お客様は解決策を求めているからです。
例えば、「実は現在の運用方法に課題を感じていて…」というような発言があった時こそ、商品提案のチャンスです。「そうなんですか。その課題に関して、私どもの商品で解決できる可能性があります」と切り出すことで、自然な流れで提案に入ることができます。
2-3.初回でクロージングまで持っていく会話の進め方
多くの営業マンは、初回商談では情報収集に徹し、契約は次回以降と考えがちです。しかし、これは大きな機会損失です。むしろ、初回こそが最大のチャンスなのです。
具体的な会話の進め方は以下の通りです。まず、お客様の課題を明確にします。次に、その課題に対する解決策を提示します。そして、「今決断することのメリット」を具体的な数字や事例を交えて説明します。
重要なのは、単なる押し売りではなく、お客様自身が「今決めたほうが良い」と感じる流れを作ることです。これには、先ほどご説明した「さしすせそ」のフレームと、本音を引き出す質問技法を組み合わせることが効果的です。
実際の商談では、「この件について、社内で検討させてください」という反応が返ってくることも多いでしょう。しかし、それは必ずしも否定的な反応ではありません。むしろ、具体的な検討に入ったというサインと捉えることができます。
ここで、私が実際に経験した具体的な成功事例をご紹介します。
【新人営業マンの成功事例】
入社2ヶ月目の新人営業マンが、初回商談で1,000万円の契約を獲得した事例です。
この営業マンは、まず「さしすせそ」を意識的に活用し、お客様との信頼関係を構築。その上で、「御社の課題は〇〇という認識でよろしいでしょうか?」と確認を取りながら会話を進めました。
そして「その課題に対して、具体的にこのような解決策をご提案できます」と、数字を交えた明確な提案を行いました。
お客様からは「今すぐには決められない」という返答がありましたが、
「承知しました。ただ、この商品は原価高騰の影響で、来月から20%の値上げが予定されています。今なら現状の価格で提供できますが、いかがでしょうか?」
と、今決断することのメリットを具体的に示したところ、その場で契約をいただくことができました。
【中堅営業マンの転換点となった事例】
月間売上が低迷していた中堅営業マンが、この手法を実践して3ヶ月で売上を4倍に伸ばした事例もあります。
それまで2回目、3回目の商談で契約を取ることが多かったこの営業マンは、初回商談での情報収集と提案に重点を置く方法に切り替えました。
特に「そうなんですか」というフレーズを活用して、お客様の課題を深く掘り下げることを意識したところ、商談の成約率が大きく向上したのです。
これらの事例が示すように、科学的なアプローチと正しい会話術を組み合わせることで、経験に関係なく成果を上げることが可能です。
3.営業はサイエンスである
ここまでご説明してきた営業手法は、決して感覚や経験則だけで成り立っているものではありません。営業は、再現性のある科学(サイエンス)なのです。総務省の調査によると、日本の営業職は約880万人いますが、この事実を理解している営業マンは非常に少ないのが現状です。
3-1.再現性の高い営業トークの作り方
再現性の高い営業トークとは、誰が行っても同じような成果が出せる仕組みのことです。私は30年の営業経験で2000人以上の営業マンを育成してきましたが、その中で分かったのは、成功する営業トークには必ず法則性があるということです。
再現性の高い営業トークには、以下の4つの基本構造があります。
- 【Step1】お客様の課題を明確化する
- 【Step2】具体的な解決策を提示する
- 【Step3】導入のメリットを説明する
- 【Step4】決断を促す質問をする
それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
【Step1:お客様の課題を明確化する】
まずは現状の課題を具体的な数字や事例とともに整理します。このステップで十分な時間を取ることが重要です。
【Step2:具体的な解決策を提示する】
課題が明確になったら、その解決策を具体的に提示します。この時、なぜその解決策が最適なのかの理由も添えます。
【Step3:導入のメリットを説明する】
解決策を導入することで得られるメリットを、できるだけ具体的な数字で示します。
【Step4:決断を促す質問をする】
最後に「このような効果が期待できますが、いかがでしょうか?」と、決断を促す質問を投げかけます。
この流れは、お客様の心理的なハードルを一つずつ下げていく科学的なアプローチです。営業は決して運や勘に頼るものではないのだということを、ぜひ覚えておいてください。
3-2.科学的アプローチによる顧客心理の理解
顧客心理を理解するには、データに基づいた分析が欠かせません。例えば、初回商談での成約率は、最初の5分間の会話の質で80%以上が決まると言われています。
これは、お客様が無意識のうちに「この営業マンは信頼できるか」という判断を下しているからです。だからこそ、先ほどご説明した「さしすせそ」のような基本フレームが重要になってきます。
しかし、より重要なのは、お客様の発言や態度の変化を科学的に観察し、適切なタイミングで適切な対応を取ることです。これは単なる経験則ではなく、体系化された知識とスキルに基づく判断なのです。
3-3.数字で見る効果的な営業トーク
営業トークの効果は、以下の3つの重要な数値指標で測定することができます。
- 話す:聞くの最適な比率(43:57)
- 質問への応答時間(2秒以内)
- 初回商談での成約率(商談の最初の5分で80%が決まる)
それぞれの指標について詳しく見ていきましょう。
【話す:聞くの最適な比率】
ある調査によると、効果的な営業トークにおける「話す:聞く」の理想的な比率は43:57です。これは、お客様の話をしっかりと聞くことの重要性を数字で示した典型的な例です。
【質問への応答時間】
お客様の質問に対して2秒以内に的確な回答ができる営業マンは、そうでない営業マンと比べて成約率が約1.5倍高いというデータがあります。
【初回商談での成約率】
初回商談での成約率は、最初の5分間の会話の質で80%以上が決まると言われています。これは準備の重要性を示す重要な指標です。
このように、営業トークの各要素は数値化して分析することができ、それによって具体的な改善点を見出すことができます。
これこそが、営業をサイエンスとして捉えることの本質なのです。
【成果を上げている営業マンの会話分析】
測定項目 | 平均的な値 | 理想的な値 |
---|---|---|
話す:聞く比率 | 65:35 | 43:57 |
質問応答時間 | 5秒以上 | 2秒以内 |
最初の5分間 | 効果的に使えず初回での成約率がDOWN | 効果的に使い初回での成約率がUP |
4.トップセールスになるための営業トーク戦略
営業をサイエンスとして捉え、科学的なアプローチで取り組むことで、誰でもトップセールスになることができます。私は30年の営業経験の中で、数多くの「普通の営業マン」が、わずか数ヶ月でトップセールスへと成長する姿を見てきました。
4-1.プロフェッショナルの会話術
プロフェッショナルの会話術には、以下の3つの特徴があります。
- お客様の人生をより良くする明確な目的意識
- 必要な場合は異を唱える勇気
- 長期的な信頼関係を重視する姿勢
それぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
【お客様の人生をより良くする明確な目的意識】
単に商品を売ることだけを考えている営業マンは、決して長期的な成功を収めることはできません。常にお客様の人生をより良くすることを意識して会話を進めます。
【必要な場合は異を唱える勇気】
「確かにその方法も一つの選択肢ですが、あえて申し上げると、この方法のほうがより効果的だと思います」というように、時にはお客様の考えに異を唱えることも必要です。
【長期的な信頼関係を重視する姿勢】
このような誠実なアプローチは、時として短期的な売上の機会損失につながるかもしれません。しかし、長期的に見れば、必ず大きな成果につながっていきます。
4-2.顧客との信頼関係構築法
信頼関係の構築には、「言うべきことは言う」という勇気が必要です。多くの営業マンは、お客様の機嫌を損ねることを恐れて、必要な指摘を避けてしまいます。しかし、それは結果的にお客様のためにならないばかりか、信頼関係の構築を妨げることにもなります。
例えば、お客様が予算の都合で品質の劣る商品を選ぼうとしている場合、「確かに初期費用は抑えられますが、長期的に見ると保守費用がかさむため、トータルコストは上がってしまう可能性があります」と、はっきりと伝えるべきです。
このような率直なコミュニケーションは、時として緊張関係を生むかもしれません。しかし、そこを乗り越えることで、より深い信頼関係を築くことができます。これこそが、プロフェッショナルな営業パーソンに求められる姿勢なのです。
4-3.短期間で成果を出すための実践手法
営業は決して長期戦である必要はありません。適切な方法で取り組めば、短期間で確実に成果を出すことができます。私が30年の営業経験で培った方法を実践すれば、3ヶ月程度で具体的な成果を実感できるようになります。
具体的には、毎日の行動を以下のように組み立てていきます。朝一番で、その日の商談内容を確認し、想定される質問への回答を準備します。商談後は必ず振り返りの時間を設け、会話の内容や客様の反応を細かく分析します。このような地道な積み重ねが、短期間での成長を可能にするのです。
特に重要なのは、失敗を恐れないことです。むしろ失敗から学ぶ姿勢こそが、急成長の鍵となります。ただし、「失敗してから学ぶ」のではなく、「予測される失敗を事前に防ぐ」という考え方で取り組むことが重要です。
おわりに
ここまで、営業トークの基本から応用まで、具体的な手法をご紹介してきました。「さしすせそ」という基本フレームは、あくまでも出発点に過ぎません。真に重要なのは、これらの手法を科学的なアプローチで実践し、お客様の人生をより良いものにすることです。
営業は決して、才能や特殊なスキルに頼る職種ではありません。誰でも、正しい理論と実践方法を学べば、必ず結果を出すことができます。私は30年の営業経験を通じて、この事実を何度も目の当たりにしてきました。
今回ご紹介した内容は、2000人以上の営業マンを育成してきた経験から得た、実践的かつ効果的な手法です。これらを着実に実践することで、あなたも必ずトップセールスになることができます。
最後に一つ、大切なことをお伝えしましょう。営業の本質は、お客様の人生をより良いものにすることです。この志を持ち続ける限り、あなたの成長に限界はありません。
ぜひ、この記事で学んだことを明日からの営業活動に活かしてください。きっと、具体的な成果を実感できるはずです。
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