「新規開拓に行かなきゃいけないけど、どうしていいかわからない…」
「アポイントが取れず、ノルマ達成に不安を感じている…」
「何度やっても成果が出ず、自信をなくしている…」
こんな悩みを抱えている営業マンの方は多いのではないでしょうか。
実は、新規開拓で成功するかどうかは、営業マンの性格や話術ではなく、正しいプロセスを知っているかどうかで決まります。
私は大手ハウスメーカーで27年間、営業とマネジメントの経験を積み、2000名以上の営業マンの中でトップ0.5%以内の成績を何度も達成してきました。さらに、管理職として数百名の営業マンを指導し、その9割以上を成果の出せる営業マンへと育て上げてきました。
その経験から言えるのは、新規開拓は「サイエンス(科学)」であり、正しい理論とプロセスさえ知っていれば、誰でも必ず結果を出せるということです。
今回は、私が実践してきた新規開拓の具体的なプロセスと、明日から使える実践的な手法をお伝えします。
▼この記事で分かること
- 新規開拓で成功する営業マンの特徴と考え方
- 効果を最大化する7つの基本プロセス
- 各プロセスの具体的な実践手法
- 継続的に成果を出すための仕組み作り
1.新規開拓で成功する営業とそうでない営業の違い
まず最初に、なぜ多くの営業マンが新規開拓で成果を出せないのか、その本質的な理由について説明していきます。
1-1.9割の営業マンが間違える新規開拓の基本
多くの営業マンは「新規開拓は運や縁に左右される」「話が上手い人にしかできない」と思い込んでいます。しかし、これは完全な誤解です。
なぜなら、新規開拓の成否を決めるのは、運や話術ではなく、「システマティックなプロセス」の有無だからです。
例えば、私が指導してきた営業マンの中には、人見知りで話すことが苦手な方もいました。しかし、正しいプロセスを学び、実践することで、わずか3ヶ月で契約率を3倍に伸ばすことができました。
重要なのは、「誰に」「どのタイミングで」「何を」伝えるかという具体的な手順であり、これは誰でも習得できるスキルなのです。
1-2.ノルマ達成に必要な新規開拓の3つの視点
では、具体的にどのような視点を持てば良いのでしょうか。ここでは、新規開拓を成功に導く3つの重要な視点をご説明します。
【1. 顧客中心の視点】
新規開拓で最も重要なのは、「自分が売りたい」という視点ではなく、「顧客が必要としているかもしれない」という視点です。相手の課題やニーズを第一に考えることで、自然と信頼関係が構築されていきます。
【2. プロセス重視の視点】
「今日は何件アポを取るぞ」という結果だけを追い求める姿勢では、持続的な成果は得られません。各プロセスの質を高めることこそが、最終的な成果につながります。
【3. 科学的な視点】
感覚や経験則だけに頼るのではなく、データに基づいた分析と改善を行うことが重要です。例えば、アプローチの成功率やベストな訪問時間帯などを把握し、効率的な営業活動を実現します。
このように、新規開拓は決して運や才能に左右される活動ではありません。正しい視点とプロセスを持ち、地道に実践を重ねることで、誰でも必ず成果を出すことができるのです。
では次の章から、具体的な7つのプロセスについて、詳しく解説していきます。
2.新規開拓の7つの基本プロセス
前章で説明した3つの視点を踏まえた上で、ここからは具体的な新規開拓のプロセスについて解説していきます。
新規開拓を成功させるためには、「闇雲に飛び込む」のではなく、効果的なプロセスを順序立てて実行することが重要です。このプロセスを正しく理解し、実践することで、無駄な営業活動を減らし、効率的に成果を上げることができます。
それでは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。
2-1.【Step1】エリア・ターゲット選定
新規開拓の成否を決める最も重要なポイントは、実は最初のエリアとターゲットの選定にあります。私の27年の営業経験から言えば、成功する営業マンと成功しない営業マンの違いは、このステップでの判断力にあると言っても過言ではありません。
まず、エリアの選定では、「ポテンシャル」と「競合状況」の2つの視点から分析を行います。例えば、新築マンションが建設中のエリアであれば、新規の入居者が見込めるためポテンシャルが高いと言えます。一方で、すでに多くの競合が参入しているエリアは、たとえポテンシャルが高くても成果は出にくくなります。
ターゲットの選定においては、自社製品やサービスとのマッチ度を重視します。「とにかく数を回れば良い」という考えは捨て、確度の高い見込み客に絞って営業活動を行うことで、限られた時間で最大の効果を得ることができます。
2-2.【Step2】事前準備と下調べ
エリアとターゲットが決まったら、次は徹底的な事前準備と下調べを行います。この段階での準備が不十分だと、せっかくのアプローチも効果が半減してしまいます。
特に重要なのは、ターゲット企業や業界の課題を事前に把握しておくことです。例えば、製造業であれば「人手不足」や「コスト削減」といった一般的な課題に加え、その業界特有の課題も存在します。これらの情報を事前に整理しておくことで、初回アプローチ時の会話の糸口を作ることができます。
2-3.【Step3】初回アプローチ
ここまでの準備が整ったら、いよいよ実際のアプローチです。初回アプローチの成否は、最初の30秒で決まると言っても過言ではありません。
私が特に重視しているのは、「相手の時間を奪っている」という意識です。だからこそ、最初の挨拶から用件まで、30秒以内で完結に伝えることを心がけます。例えば、「〇〇の件で他社様でも導入実績があり、御社でもお役に立てる可能性があるのではと思い、お伺いしました」といった具合です。
この後、相手の反応を見ながら会話を展開していくわけですが、ここからが本当の営業の始まりです。次回は、ヒアリングから商談までの具体的なプロセスについて詳しく解説していきます。
2-4.【Step4】ヒアリングと課題抽出
初回アプローチで会話の糸口を作れたら、次は相手の課題を明確にするヒアリングのステップです。このステップでは「質問の質」が極めて重要になります。
例えば「何かお困りのことはありませんか?」という漠然とした質問では、相手は「特にありません」と返答するのが普通です。そうではなく、事前準備で把握した業界課題に基づいて、「他社様でもよく聞く○○の課題については、御社ではいかがでしょうか?」というように具体的に質問することで、相手の本音を引き出すことができます。
2-5.【Step5】提案と価値提示
ヒアリングで課題が見えてきたら、すかさず価値提示を行います。このとき重要なのは、「商品の機能や特徴」ではなく「導入後のメリット」を具体的な数字とともに示すことです。
たとえば、「この商品は省エネ性能が高いです」という説明ではなく、「御社の規模であれば、年間で約○○万円のコスト削減が見込めます」というように、相手にとって具体的なメリットを示すことで、商談への興味を引き出すことができます。
2-6.【Step6】アポイント獲得
価値提示ができたら、その場でアポイント獲得を目指します。ここで多くの営業マンは「また改めて」と言われると引き下がってしまいますが、それは大きな機会損失です。
私の経験上、「また改めて」は99%が「NO」を意味します。そのため、その場で「では、具体的な数字とともに、より詳しいご提案をさせていただきたいのですが」と、次回の約束を取り付けることが重要です。
2-7.【Step7】商談準備と実施
アポイントを獲得できたら、最後は商談に向けた準備です。このステップで特に意識すべきは、「相手の時間を無駄にしない」という点です。
具体的には以下のような準備が必要です。まず、初回ヒアリングで得た情報を元に、相手企業に特化した提案資料を作成します。次に、想定される質問への回答や、価格に関する具体的な説明資料も用意します。さらに、商談時には即決できるよう、契約書や申込書なども準備しておきます。
このように、7つのプロセスをきちんと踏むことで、新規開拓の成功率は大きく向上します。では次の章では、これらのプロセスをより効果的に実行するための具体的な手法について、詳しく解説していきます。
3.効果を最大化する各プロセスの具体的手法
前章では7つの基本プロセスの全体像をお伝えしました。ここからは、各プロセスをより効果的に実行するための具体的な手法について解説していきます。
3-1.エリア選定で知っておくべき3つの原則
エリア選定は新規開拓の土台となる重要なステップです。多くの営業マンは「とりあえず近くから」と安易に考えがちですが、それでは効率的な営業活動はできません。
エリア選定で意識すべき3つの重要な原則は以下の通りです。
- 商圏分析
- 競合状況
- アクセス効率
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
【商圏分析】
例えば、私が若手時代に担当していた住宅営業では、新築マンションが建設されるエリアの3km圏内を重点的に開拓することで、成約率を3倍に高めることができました。
【競合状況】
たとえ見込み客が多いエリアでも、すでに競合が多数参入している場合は、別のエリアを検討した方が効率的です。
【アクセス効率】
1日の営業時間のうち、移動時間が2割を超えないよう、効率的なルートを設計することが重要です。
3-2.事前準備で必ず押さえるべき4つのポイント
エリアが決まったら、次は徹底的な事前準備です。私の経験上、成功する営業マンと成功しない営業マンの違いは、この準備の質にあります。
事前準備で押さえるべき4つのポイントは以下の通りです。
- 業界研究
- 競合分析
- 提案シナリオの準備
- 成功事例の準備
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
【業界研究】
その業界特有の課題や最新トレンドを把握することで、ヒアリング時の会話の糸口を作ることができます。
【競合分析】
競合他社の商品やサービスの特徴を把握し、自社との違いを明確にすることで、的確な提案が可能になります。
【提案シナリオの準備】
想定される質問や懸念点に対する回答を事前に用意することで、スムーズな商談進行が可能になります。
【成功事例の準備】
同業種での導入実績があれば、具体的な効果を示すことができ、信頼性が大きく向上します。
3-3.アプローチを成功に導く5つの具体的テクニック
さて、ここからが本番です。初回アプローチの成否は、最初の30秒で8割が決まると言っても過言ではありません。
成功するアプローチに欠かせない5つのテクニックは以下の通りです。
- 時間への配慮
- 第一印象
- キーパーソンの見極め
- 切り口の選定
- タイミングの見極め
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
【時間への配慮】
「お時間を頂戴できますでしょうか」という言葉は避け、「30秒だけお話させていただけますでしょうか」と具体的な時間を示すことで、相手の警戒心を下げることができます。
【第一印象】
私は若手営業マンに「30m手前から笑顔で歩く」ことを指導しています。これにより、自然な笑顔でアプローチすることができます。
【キーパーソンの見極め】
受付や秘書の方との会話から、意思決定者の情報を適切に収集することが重要です。
【切り口の選定】
事前準備で把握した業界課題から、最も効果的な切り口を選んでアプローチします。
【タイミングの見極め】
訪問時間帯は業種によって最適な時間が異なります。例えば、小売業では開店直後を避け、比較的落ち着いている午前10時頃を狙うなどの工夫が必要です。
次は、これらの準備とアプローチを活かした、実践的なヒアリング手法について解説していきます。
3-4.ヒアリングの黄金パターン
初回アプローチで会話の糸口を作れたら、次はヒアリングです。ここで多くの営業マンは「何かお困りごとはありませんか?」という質問から入りがちですが、これは最も避けるべき質問パターンです。
私が27年の営業経験で培った「黄金パターン」は、次のような流れです。まず「他社様でもよく聞く○○の課題について、御社ではどのように対応されていますか?」と具体的な課題を例示します。次に「それは、具体的にどのような影響が出ているのでしょうか?」と深掘りします。そして「その課題について、どのくらいのコストがかかっているとお考えですか?」と数値化を試みます。
このように、相手の課題を「具体化」→「深掘り」→「数値化」というステップで明確にしていくことで、後の価値提示がより効果的になります。
3-5.価値提示で意識すべき3つの要素
ヒアリングで課題が明確になったら、次は価値提示です。ここで重要なのは、「商品の機能や性能」ではなく、「導入後のメリット」を具体的に示すことです。
価値提示で意識すべき3つの要素は以下の通りです。
- 数値による具体化
- 時間軸の明確化
- 実績による裏付け
それぞれについて詳しく解説していきましょう。
【数値による具体化】
例えば「コスト削減できます」ではなく、「御社の規模であれば、年間約○○万円の削減効果が見込めます」というように具体的な数字で示します。
【時間軸の明確化】
「すぐに効果が出ます」という曖昧な表現は避け、「導入から3ヶ月で投資回収が可能です」というように、具体的な期間を示します。
【実績による裏付け】
同業他社での導入実績があれば、具体的な成功事例として共有します。
3-6.アポイント獲得率を高める実践的手法
価値提示ができたら、その場でアポイント獲得を目指します。私の経験では、「また改めて」と言われて実際にアポイントが取れる確率は1%未満です。
そこで重要なのが「クロージングまでの時間」です。価値提示から3分以内にアポイントの提案をすることで、成功率は大きく向上します。具体的には「では、より詳しい数字とともに、具体的なご提案をさせていただきたいのですが」と切り出し、その場で日程調整を行います。
3-7.商談成約率を高める具体的アプローチ
アポイントが取れたら、最後は商談です。この段階で最も重要なのは「相手の時間を無駄にしない」という意識です。
そのために、必ず事前に詳細な提案資料を準備します。特に、商談の場で即決できるよう、見積書や契約書なども用意しておきましょう。また、想定される質問への回答や、価格に関する具体的な説明資料も必要です。
さらに、商談中は相手の反応を細かく観察し、必要に応じて提案内容を柔軟に調整できるよう準備しておくことも重要です。
このように、各プロセスにおいて具体的な実践手法を押さえることで、新規開拓の成功率は大きく向上します。では次の章では、これらの手法を継続的な成果につなげるための仕組み作りについて解説していきます。
4.新規開拓を継続的な成果につなげる仕組み作り
これまで新規開拓における具体的な手法をお伝えしてきました。しかし、一時的な成功ではなく、継続的な成果を出すためには、効果的な「仕組み作り」が不可欠です。
ここからは、私が27年間の営業経験で培った、成果を継続させるための具体的な方法をお伝えします。
4-1.日々の営業活動を記録・分析する方法
多くの営業マンは「今日は何件訪問した」という数字だけを記録しがちです。しかし、本当に重要なのは「質」の記録です。
例えば、私は若手時代から次のような記録を徹底していました。まず、アポイントが取れた場合も、断られた場合も、以下の項目を必ず記録します:
- どの業界か
- どんな役職の方か
- 何時頃の訪問か
- どのような切り口でアプローチしたか
このように項目を明確にして記録することで、後の分析が格段にしやすくなります。
反対に、断られた時も同様の項目を記録します。
さらに重要なのが、その日のうちに記録を振り返ることです。私の場合、毎日終業後の30分を使って、その日の記録を分析していました。
「この業界ではこの切り口が効果的だった」「この時間帯は応対してもらいやすい」といった気づきを書き出すことで、翌日からの営業活動に活かすことができます。
4-2.PDCAを回して成果を向上させる具体策
記録と分析ができたら、次は具体的な改善活動です。ここで重要なのは、「感覚」ではなく「数字」に基づいた改善を行うことです。
例えば、アポイント獲得率が低い場合、まずは現状の数値を正確に把握します。「100件のアプローチのうち、何件のアポイントが取れているか」「どの業種が特に低いのか」「どの時間帯が効果的なのか」といった具合です。
そして、その数字を基に具体的な改善策を立てます。「この業界へのアプローチは午前中に集中する」「この切り口での説明は3分以内に収める」など、具体的な行動レベルまで落とし込みます。
この改善活動は、週単位でのPDCAサイクルを回すことが効果的です。私の経験では、このサイクルを3ヶ月継続することで、アポイント獲得率を平均して2倍以上に高めることができました。
次は、このような改善活動を更に効果的にするための、上司への報告・相談の方法について解説していきます。
4-3.上司への報告・相談で意識すべきこと
PDCAを効果的に回すためには、上司への適切な報告・相談が重要です。単なる数字の報告ではなく、「改善のための相談」という意識で臨むことで、上司からより具体的なアドバイスを得ることができます。
特に意識すべきは「課題の見える化」です。例えば「アポイントが取れません」という漠然とした報告ではなく、「○○業界へのアプローチで、アポイント率が5%と低迷しています。現在は△△という切り口で話をしていますが、より効果的なアプローチ方法はありますでしょうか」というように具体的に相談します。
このように報告・相談の質を高めることで、上司との信頼関係も深まり、より実践的なアドバイスを得られるようになります。
5.まとめ:新規開拓を成功に導く7つの行動指針
ここまで、新規開拓を成功に導くための具体的な方法をお伝えしてきました。最後に、必ず実践していただきたい7つの行動指針をまとめます:
- 科学的アプローチを徹底する
- 営業時間の3割は準備に充てる
- 初回で必ず価値を提示する
- 活動は必ず数値で管理する
- その日の記録は必ずその日のうちに行う
- 週単位でPDCAを回す
- 上司との連携を強化する
【科学的アプローチの徹底】
新規開拓は決して運や勘に頼るものではありません。正しいプロセスと再現性のある手法で、必ず成果は出せます。
【準備時間の確保】
営業時間の3割は準備に充てましょう。徹底的な事前準備が、その後の成果を大きく左右します。
【初回での価値提示】
「また改めて」は機会損失です。初回で価値を明確に示し、その場でアポイント獲得を目指しましょう。
【数値による管理】
感覚ではなく、具体的な数字で活動を管理します。これにより、改善ポイントが明確になります。
【記録の習慣化】
その日の活動は、必ずその日のうちに記録と振り返りを行いましょう。
【継続的な改善】
週単位でPDCAを回し、具体的な改善活動を続けることが重要です。
【上司との連携強化】
課題を具体化して報告・相談することで、より効果的なアドバイスを得ることができます。
新規開拓は、誰でも必ず成果を出せる営業活動です。正しい理論と地道な実践があれば、必ず結果はついてきます。
本記事で解説した内容を、ぜひ明日からの営業活動に活かしてください。そして、営業の仕事を通じて、皆さんが成長と自信を手に入れられることを心から願っています。
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