「営業がつらい」を乗り越えるための具体的な処方箋

「営業がつらい」を乗り越えるための具体的な処方箋

「この営業の仕事、本当に自分に向いているのだろうか…」

営業の第一線で27年間、延べ2000名以上の営業マンと関わってきた私は、こんな思いを抱く営業マンを数多く見てきました。

初めは意気込んで営業の世界に飛び込んだはずなのに、思うように成果が出ず、日々のノルマに追われ、徐々に自信を失っていく。そんな状況に直面している方も多いのではないでしょうか。

特に営業1-3年目は誰もが通る困難の時期です。実際、私が指導してきた営業マンの中でも、7割以上が「営業がつらい」というフェーズを経験しています。しかし、その後、彼らの多くは安定した成果を出せるようになり、中にはトップセールスに成長した人も大勢います。

今回は、私が営業プレイヤーとして4.5億円の売上を達成し、その後12年間のマネージャー経験で培った知見をもとに、「営業がつらい」と感じる原因と、その改善方法を具体的にお伝えしていきます。

▼この記事を読むことで分かること

  • なぜ営業がつらく感じるのか、その本質的な原因
  • つらさを軽減しながら成果を出すための具体的な方法
  • 明日から実践できる具体的なアクションプラン

1.「営業がつらい」の原因は3つある

営業がつらいと感じる原因は、実は明確なパターンがあります。これは私が多くの営業マンを見てきた経験から導き出した結論です。まずはその原因を理解することから始めましょう。

1-1.結果が出ないことへの焦りと不安

ほとんどの営業マンが最初に直面するのが、成果が出ないことへの焦りです。この焦りは、時として致命的なメンタルの消耗を引き起こします。

1-1-1.数字のプレッシャーに潰されそう

「今月はまだ1件も契約が取れていない」「このままでは目標未達になる」。多くの営業マンがこうした不安を抱えています。

月末が近づくにつれてプレッシャーは増大し、焦りから強引な営業をしてしまったり、逆に委縮して行動量が減ってしまったりと、負のスパイラルに陥りやすくなります。

特に新人営業マンの場合、このプレッシャーをうまくコントロールできず、パフォーマンスが著しく低下してしまうことも少なくありません。

1-1-2.このままでは先が見えない

数字のプレッシャーは、より深刻な不安へと発展していきます。「このままでは営業職は務まらないのではないか」「他の仕事に転職した方がいいのではないか」。

こうした不安は、誰もが一度は感じるものです。私自身、営業2年目の時期に大きな壁にぶつかり、同じような悩みを抱えていました。しかし、これは成長過程での一時的な感情であることが多く、適切な対処法を知ることで必ず克服できるものなのです。

この不安から抜け出すためには、まず今の状況を客観的に理解することが重要です。なぜなら、この「先が見えない不安」は、実は次に説明する2つの要因と密接に関係しているからです。

1-2.自己肯定感の低下

先ほど触れた「先が見えない不安」は、実は自己肯定感の低下と密接に関係しています。営業という仕事は、日々の商談結果が自分の価値と直結しやすい特徴があるためです。

1-2-1.断られ続けて自信を失う

「申し訳ありませんが、他社で…」「今は結構です」。こうした言葉を何度も聞くことで、営業マンの心は少しずつ削られていきます。

私の経験では、特に真面目で誠実な営業マンほど、この状況に苦しみやすい傾向があります。なぜなら、お客様のために本気で良い提案をしているにも関わらず、その想いが届かないことへの無力感を感じてしまうからです。

しかし、ここで重要なのは、お客様からの「No」は必ずしもあなたの提案や人格を否定しているわけではないということです。これは私が27年の営業経験で確信を持って言えることですが、タイミングや予算の問題で「No」と言わざるを得ないお客様は数多く存在します。

1-2-2.周囲との比較で追い詰められる

自己肯定感の低下は、周囲との比較によってさらに加速します。

「同期の○○さんは既に目標を達成している」「あの先輩は入社1年目から結果を出していた」。こうした比較は、時として自分を追い詰める要因となります。

特に昨今のSNS時代では、他者の成功体験が日常的に目に入ってくるため、この比較による精神的な負荷は以前より大きくなっています。

1-3.営業の仕方がわからない

そして、これらの問題の根底には、多くの場合「営業の仕方がわからない」という本質的な課題が潜んでいます。

1-3-1.何から手をつけていいかわからない

「とにかく電話をかけろ」「飛び込みをしろ」。多くの営業現場では、具体的な方法論よりも行動量を重視する指導が一般的です。

確かに行動量は重要ですが、それだけでは十分ではありません。

例えば、ある営業マンが「お客様のことを第一に考えて、丁寧な営業をしたい」と思っていても、具体的にどのような行動を取ればいいのかわからず、結果として「ただ商品の説明をして帰ってくる」だけの営業になってしまうことがあります。

1-3-2.頑張っても成果に結びつかない

そして、この「正しい営業の仕方がわからない」という状態は、最も深刻な問題を引き起こします。それは「頑張れば頑張るほど、むなしさが増す」という現象です。

実際、私が指導してきた営業マンの中にも、毎日遅くまで働き、休日返上で営業資料を作成しているにもかかわらず、なかなか成果に結びつかないケースがありました。これは単に努力が足りないわけではなく、その努力の方向性に課題があるケースがほとんどです。

このように、「営業がつらい」と感じる原因には、結果が出ないことへの焦り、自己肯定感の低下、そして営業の仕方がわからないという3つの要素が複雑に絡み合っています。では、これらの問題をどのように解決していけばよいのでしょうか。次章では、その具体的な改善方法をご紹介していきます。

2.つらさを軽減する3つの具体的な改善ポイント

それでは、先ほどお伝えした3つの問題を解決するための具体的な改善方法をご紹介していきます。これらは私が数百名の営業マンを指導してきた中で、特に効果が高かった方法です。

2-1.数値目標を分解して小さな成功体験を増やす

まず取り組むべきは、重圧となっている数値目標を、達成可能な小さな目標に分解することです。大きすぎる目標は、それ自体がストレスとなって私たちの行動を硬直させてしまいます

2-1-1.月間目標を日次・週次の行動目標に落とし込む

「今月の売上3000万円」という目標は、それだけを見つめていると途方もない数字に感じられます。しかし、これを日々の具体的な行動レベルまで分解すると、見え方が大きく変わってきます。

例えば、ある営業マンを指導した際、月間目標の3000万円を「1日4件の訪問」「週3件の商談」という具体的な行動目標に置き換えました。すると、彼は「今日はもう3件訪問できた。あと1件で目標達成だ」というように、前向きな意識で取り組めるようになりました。

2-1-2.達成可能な小さなゴールを設定する

数値目標の分解に加えて重要なのが、確実に達成できる小さなゴールを設定することです。私の経験上、成功体験の積み重ねこそが、営業マンの成長を加速させる最大の推進力となります。

例えば、「新規開拓の電話を50件かける」という目標の前に、まずは「3件のアポイントを取る」という小さな目標を立てます。そして、それを達成したら「商談資料を作成する」という次の目標に移る。このように、一つひとつ確実に達成していける目標を設定することで、自信を取り戻していくことができます。

2-2.自分なりの営業スタイルを確立する

続いて、自己肯定感の回復に効果的な「自分なりの営業スタイルの確立」について説明していきます。

2-2-1.まずは先輩の真似から始める

「自分らしい営業スタイル」という言葉を聞くと、最初から完璧なものを作らなければいけないと思いがちです。しかし、それは大きな誤解です。営業スタイルは、まず誰かの真似から始めることが重要です。

私が新人時代、最初に取り組んだのは、当時のトップセールスだった先輩の商談の「型」を完全にコピーすることでした。挨拶の仕方、資料の見せ方、質問の順序まで、徹底的に真似ることに集中しました。

2-2-2.徐々に自分らしさを加える

基本の型を習得したら、そこに少しずつ自分らしさを加えていきます。例えば、私の場合は図や表を多用する説明が得意だったため、先輩の商談の型に自分なりの図解説明を組み込んでいきました。

このアプローチの利点は、最初から完璧を目指す必要がないことです。基本の型があるため、大きく外すことはありません。その上で、自分の得意分野や個性を少しずつ付け加えていけばいいのです。

2-3.営業の基本プロセスを見直す

最後に、営業の仕方に関する具体的な改善方法をお伝えします。

2-3-1.商品知識と業界理解を深める

多くの営業マンは「商品知識は十分にある」と考えがちです。しかし、本当に効果的な営業とは、商品知識と業界理解の両方が揃って初めて実現します。

私は営業マンに「なぜお客様がその商品を必要とするのか」「業界ではどのような課題が一般的なのか」といった、より広い視点での理解を促しています。この理解があることで、単なる商品説明ではない、お客様の課題に寄り添った提案が可能になるのです。

2-3-2.顧客との会話の質を上げる

最後に、最も重要なポイントが「顧客との会話の質」です。多くの営業マンは商品説明に終始しがちですが、実はお客様の話を「聞く」スキルこそが、成約率を大きく左右します。

例えば、「御社の課題は何ですか?」という質問ではなく、「他社様では○○という課題で困っていらっしゃる方が多いのですが、御社ではいかがでしょうか?」というように具体例を示しながら質問することで、より深い会話を引き出すことができます。

これらの改善ポイントは、すぐに実践できるものばかりです。では、具体的にどのように行動に移していけばよいのでしょうか。次章では、明日から実践できるアクションプランをご紹介していきます。

3.明日から実践できる具体的なアクションプラン

これまでお伝えした改善ポイントを、具体的にどのように実践していけばよいのでしょうか。ここでは、私が実際に多くの営業マンを指導する中で効果を実感している、具体的なアクションプランをご紹介します。

3-1.1日の時間の使い方を見直す

まず取り組むべきは、1日の時間の使い方を見直すことです。多くの営業マンは「忙しい」と感じていますが、実は「効果的な時間の使い方」ができていないケースが大半です。

私が推奨しているのは、朝型の営業スタイルです。具体的には、出社後の2時間を「準備の時間」として確保します。この時間で今日の商談の準備や、顧客情報の整理、業界ニュースのチェックを行います。こうすることで、その日一日を余裕を持って過ごすことができます。

特に重要なのは、商談前の30分は必ず準備時間として確保することです。「急いでいるから」と準備を怠ると、かえって時間を無駄にすることになります。

3-2.週間PDCAサイクルを回す

日々の行動を改善していくために、週間でのPDCAサイクルを確立することをお勧めします。

具体的には、毎週金曜日の夕方に30分程度の時間を取り、その週の活動を振り返ります。重要なのは「数字の振り返り」だけでなく、「行動の質の振り返り」を行うことです

例えば、私の部下は「今週うまくいった商談」と「うまくいかなかった商談」をそれぞれ分析し、何が違いを生んだのかを考察します。この習慣により、徐々に自分の強みと改善点が明確になっていきます。

3-3.月1回の振り返り会を設定する

そして、月に1度は必ず大きな振り返りの機会を設けることをお勧めします。

この振り返り会では、数値目標の達成度合いはもちろんですが、それ以上に「自分の営業スタイルの進化」に焦点を当てます。例えば、「今月新しく試してみた営業手法」「お客様から好評だった提案方法」などを具体的に書き出していきます。

重要なのは、この振り返りを必ず誰かと一緒に行うことです。上司でも先輩でも同期でも構いません。第三者の視点があることで、自分では気づかなかった成長や課題が見えてくるからです。

まとめ:営業は誰でも上手くなれる

ここまで「営業がつらい」と感じる原因と、その改善方法についてお伝えしてきました。

最後に、27年間の営業経験から確信を持ってお伝えできることがあります。それは「営業は必ず上手くなれる」ということです。

なぜなら、営業は才能ではなく、明確な「型」があるスキルだからです。私が見てきた数多くの営業マンの中で、正しい方法で継続的に努力した人で、成果を出せなかった人は一人もいません

確かに、営業という仕事は時としてつらいと感じることもあるでしょう。しかし、それは成長過程での一時的な感情であり、必ず乗り越えられるものです。

本日お伝えした改善方法を一つずつ実践していけば、必ず道は開けます。そして、営業の醍醐味である「お客様と共に成長していく喜び」を実感できるようになるはずです。

明日から、できることから少しずつ始めてみてください。

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