営業のクレーム対応基本と実践的な解決策|30年で数百名指導のプロ直伝

営業マンにとって、クレーム対応は避けて通れない重要なスキルです。しかし、多くの営業マンがクレームを恐れ、適切な対応方法を知らないまま現場で困っているのが実情ではないでしょうか。

「またクレームが来たらどうしよう」「お客様に怒られるのが怖い」「営業成績に響くのではないか」といった不安を抱えながら営業活動をしている方も多いはずです。私も営業を始めた頃は、クレームの電話が鳴るたびに胃が痛くなる思いをしていました。

しかし、実はクレーム対応は営業マンにとって最大の成長機会であり、適切に対処すれば顧客との信頼関係を深める絶好のチャンスになります。私は営業現場で30年間、プレイヤーとして15年、営業マネージャーとして15年の経験を積み、数百名の営業マンを指導してきましたが、クレーム対応が上手な営業マンほど長期的に成功していることを実感しています。

実際に、私が指導したある住宅営業マンは、クレーム対応のスキルを身につけた結果、顧客満足度が大幅に向上し、年間契約数が前年比で40%増加しました。クレームを受けたお客様からの紹介で3件の契約を獲得したこともあります。

というのも、クレームは顧客の本当のニーズを知る貴重な機会だからです。表面的な不満の奥にある真の問題を解決できれば、お客様はあなたを信頼し、長期的な関係を築けるようになります。

そこで今回は、個人営業の現場で即座に使える実践的なクレーム対応法から、クレームを信頼関係に変える方法まで、営業マンが知っておくべき全てを解説します。この記事を読み終える頃には、クレームを恐れるのではなく、むしろ歓迎できる営業マンに変わっているはずです。

この記事で分かること
  • 営業現場で即座に使えるクレーム対応の基本4ステップ
  • 個人営業でよくあるクレームパターンとその対処法
  • 絶対にやってはいけないNG行動とその理由
  • クレームを信頼関係に変える堤式アプローチ
  • クレーム発生を防ぐための予防策

1.営業現場でのクレーム対応【基本の4ステップ】

営業現場でクレームが発生したとき、多くの営業マンは動揺してしまい、場当たり的な対応をしてしまいがちです。しかし、クレーム対応には明確な手順があり、この手順を守ることで必ず良い結果につながります

私が30年の営業経験で身につけた、営業現場で最も効果的なクレーム対応の基本手順は以下の通りです。

営業現場でのクレーム対応の基本4ステップ
  • 【Step1】お客様の感情を受け止める
  • 【Step2】事実確認と問題の整理
  • 【Step3】解決策の提示と合意形成
  • 【Step4】フォローアップと関係修復

この4つのステップを順番通りに実践すれば、どんなクレームでも冷静に対処できるようになります。

それでは、それぞれのステップについて詳しく解説していきます。

1-1.【Step1】お客様の感情を受け止める

クレーム対応で最も重要なのは、お客様の感情を完全に受け止めることです。お客様がクレームを言う時は、必ず感情的になっています。

まずは「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と心からお詫びしましょう。この時点では、まだ事実関係は分からなくても構いません。お客様の気持ちを受け止めることが何より大切です。

私の経験では、この最初の対応でお客様の怒りが6割以上収まります。逆に、この段階で言い訳をしたり、事実確認から始めたりすると、お客様の感情はさらに悪化してしまいます。

1-2.【Step2】事実確認と問題の整理

お客様の感情が落ち着いたら、次は冷静に事実確認を行います。「詳しい状況を教えてください」「いつ頃からでしょうか」といった質問で、問題の全体像を把握しましょう。

ここで重要なのは、お客様の話を最後まで聞くことです。途中で反論したり、解決策を提示したりせず、まずは全ての情報を集めることに集中してください。

メモを取りながら聞くことで、お客様に「真剣に対応してくれている」という印象を与えることもできます。事実が整理できたら、「つまり、〇〇ということでお間違いないでしょうか」と確認を取りましょう。

1-3.【Step3】解決策の提示と合意形成

事実が明確になったら、具体的な解決策を提示します。ここでは、お客様の立場に立って、最もメリットのある解決方法を考えることが重要です。

複数の選択肢がある場合は、それぞれのメリット・デメリットを説明し、お客様に選んでいただきましょう。「こちらの方法であれば、お客様のご要望に最も近い形で解決できます」といった具合に、お客様目線で提案することが大切です。

解決策について合意が得られたら、具体的なスケジュールと次回の連絡タイミングを明確にしておきます。曖昧な約束は後でトラブルの原因になるため、必ず具体的に決めましょう。

1-4.【Step4】フォローアップと関係修復

解決策を実行した後も、フォローアップを怠ってはいけません。問題が解決したかどうかの確認と、今後の改善策について必ずお客様にご報告しましょう。

このフォローアップこそが、クレームを信頼関係に変える最重要ポイントです。「この度は貴重なご指摘をいただき、ありがとうございました。おかげで私どもも改善することができました」と感謝の気持ちを伝えることで、お客様との関係はクレーム前よりも深くなります。

実際に私が指導した営業マンの事例では、丁寧なフォローアップを行うことで驚くべき結果を得ています。ある保険営業マンは、保険金支払いに関するクレームを適切に処理し、その後3ヶ月間のフォローアップを続けた結果、そのお客様から家族全員の保険契約を獲得しました。さらに、知人を5名紹介していただき、そのうち3名との契約に成功しています。

別の住宅営業マンは、アフターサービスに関するクレーム対応後、定期的な点検とフォローを継続することで、そのお客様のリピート率を80%以上に向上させることができました。クレームを受けたお客様の方が、実はより長期的で価値の高い顧客になる傾向があるのです。

適切なフォローアップを行った営業マンは、クレーム対応前と比べて顧客満足度が平均30%向上し、紹介獲得率も2倍以上に増加することが私の指導経験から分かっています。

2.個人営業でよくある3つのクレームパターンと対処法

ここまでクレーム対応の基本ステップを解説しましたが、個人営業の現場では特定のパターンでクレームが発生することが多いです。パターンを理解しておけば、より効果的な対応ができるようになります。

というわけで、ここからは私が30年の営業経験で最もよく遭遇した3つのクレームパターンと、それぞれの具体的な対処法について詳しく解説していきます。

2-1.契約後の商品・サービス不満クレーム

契約後に「思っていたのと違う」「期待していた効果がない」といったクレームは、個人営業で最も多いパターンです。住宅営業なら設備の使い勝手、保険営業なら保障内容、車販売なら燃費や機能などが典型例です。

この場合の対処法は、まずお客様の期待と現実のギャップを具体的に把握することです。「どのような点でご期待と異なったでしょうか」と詳しく聞き、そのギャップを埋める方法を一緒に考えましょう。

完全に元通りにできない場合でも、代替案や追加サービスで満足していただける解決策は必ずあります。重要なのは、お客様の不満を真摯に受け止め、できる限りの改善策を提示する姿勢です。

2-2.営業説明と実際のギャップクレーム

「営業マンの説明と実際が違う」というクレームも非常に多いパターンです。これは営業マンの説明不足や、お客様の理解不足が原因で発生します。

このクレームへの対処では、まず自分の説明に不備がなかったかを冷静に振り返ることから始めましょう。説明不足があったなら素直に認め、改めて詳しく説明し直します。

お客様の理解不足が原因の場合でも、「説明が分かりにくかった」と責任を受け止める姿勢が大切です。「私の説明が不十分で申し訳ありませんでした。改めて詳しくご説明させてください」という対応で、多くの場合は理解していただけます。

2-3.アフターサービス対応への不満クレーム

契約後のメンテナンスやアフターサービスに対するクレームも頻繁に発生します。連絡が遅い、対応が不十分、担当者の態度が悪いなどが主な内容です。

このクレームの対処では、まず迅速な対応を約束し、実際にすぐ行動を起こすことが重要です。「本日中に担当者から連絡させます」「明日の午前中にお伺いします」といった具体的な約束をし、必ず実行しましょう。

また、今後同じようなことが起きないよう、社内の連携体制を見直すことも大切です。お客様には改善策も併せて報告することで、信頼回復につながります。

3.クレーム対応で絶対にやってはいけない5つのNG行動

さて、ここまでクレーム対応の正しい方法について解説してきましたが、同じくらい重要なのが「やってはいけないこと」を知ることです。どんなに基本を理解していても、一つのNG行動で全てが台無しになってしまうからです。

私が30年間で見てきた中で、多くの営業マンが犯しがちな致命的なミスをまとめました。

クレーム対応で絶対にやってはいけない5つのNG行動
  • 感情的になって反論する
  • 責任逃れや言い訳をする
  • お客様の話を遮る・聞き流す
  • 上司や会社のせいにする
  • その場しのぎの約束をする

これらのNG行動は、クレーム対応を必ず悪化させるため、絶対に避けなければなりません。以下の表で、各NG行動とその結果、正しい対応方法を確認してください。

NG行動 悪化する理由 正しい対応方法
感情的になって反論する お客様の怒りが増大し、関係修復に何倍もの時間が必要 冷静に受け止め、必要に応じて一度その場を離れる
責任逃れや言い訳をする お客様の信頼を完全に失い、解決への道筋が見えなくなる 責任を持って対応し、社内調整も含めて解決を図る
お客様の話を遮る・聞き流す 「真剣に聞いていない」と判断され、信頼関係が崩れる 最後まで丁寧に聞き、メモを取って真剣さを示す
上司や会社のせいにする 無責任な印象を与え、お客様の怒りがさらに増大 自分が会社の代表として責任を持って対応する
その場しのぎの約束をする 約束が守れず、後でより大きなトラブルに発展 実現可能な約束のみを具体的な期限とともに提示

それでは、それぞれについて詳しく解説していきます。

3-1.感情的になって反論する

クレーム対応で最もやってはいけないのが、お客様の言葉に感情的に反応してしまうことです。「それは違います」「そんなことは言っていません」といった反論は、火に油を注ぐ行為です。

お客様がどんなに理不尽なことを言ったとしても、まずは冷静に受け止めることが鉄則です。感情的になりそうになったら、「申し訳ございません。少しお時間をいただけますでしょうか」と一度その場を離れることも有効です。

私の指導経験では、感情的に反論してしまった営業マンは、その後の関係修復に何倍もの時間と労力を要することになります。最初から冷静に対応する方が、結果的に早期解決につながります。

3-2.責任逃れや言い訳をする

「それは私の担当ではありません」「会社の方針なので」といった責任逃れは、お客様の信頼を完全に失う最悪の対応です。お客様にとって、担当者の区別や会社の事情は関係ありません。

たとえ自分の直接的な責任でなくても、「私が責任を持って対応いたします」という姿勢を見せることが重要です。社内調整や他部署との連携も含めて、お客様の問題を解決することが営業マンの役割です。

言い訳をしたくなる気持ちは分かりますが、お客様が求めているのは言い訳ではなく解決策です。エネルギーを言い訳に使うのではなく、問題解決に集中しましょう。

3-3.お客様の話を遮る・聞き流す

お客様が話している最中に「分かりました」「承知いたします」と話を遮ったり、聞き流したりする行為も絶対に避けなければなりません。お客様は自分の気持ちを全て聞いてもらいたいと思っています

話を最後まで聞かずに対応を始めてしまうと、「この人は私の話を真剣に聞いていない」と感じられ、信頼関係が完全に崩れてしまいます。どんなに時間がかかっても、お客様の話は最後まで丁寧に聞きましょう。

また、メモを取ったり、相槌を打ったりして、積極的に聞いている姿勢を示すことも重要です。お客様が話し終わったら、「詳しくお聞かせいただき、ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えることで、より良い関係を築けます。

3-4.上司や会社のせいにする

「上司に確認しないと分からない」「会社の規則で決まっているので」といった対応は、お客様の怒りをさらに増大させます。お客様にとって、あなたが会社の代表者だからです。

たとえ本当に上司の判断が必要な場合でも、「私が責任を持って上司に確認し、必ずご連絡いたします」という姿勢を見せることが大切です。会社の方針であっても、それをお客様にどう伝えるかは営業マンの腕の見せ所です。

私が指導してきた営業マンの中でも、この点を改善するだけで劇的にクレーム対応が上手くなった事例が数多くあります。責任感を持って対応することで、お客様からの信頼も格段に向上します。

3-5.その場しのぎの約束をする

クレームを早く収めたいがために、実現できない約束をしてしまうのも最悪のNG行動です。「すぐに解決いたします」「必ず何とかします」といった曖昧な約束は、後でより大きなトラブルの原因になります。

約束は必ず実現できる内容だけに限定し、具体的な期限や方法を明確にすることが鉄則です。できないことは正直に伝え、代替案を提示する方が、長期的には信頼関係の構築につながります。

その場しのぎの約束で一時的に収まったとしても、約束が守れなかった時のお客様の失望と怒りは、最初のクレームよりもはるかに深刻になることを肝に銘じておきましょう。

4.クレームを信頼関係に変える【堤式アプローチ】

ここまで基本的なクレーム対応の方法とNG行動について解説してきましたが、さらに上のレベルを目指すなら、クレームを単なる問題処理で終わらせてはいけません。私が30年間の営業経験で培った「堤式アプローチ」では、クレームを最高の信頼関係構築の機会として活用します。

このアプローチを身につければ、クレームを恐れるどころか、むしろ歓迎できるような営業マンになれます。実際に私が指導した営業マンの多くが、このアプローチでお客様との関係をより深いものに変えることに成功しています。

4-1.クレームは営業力向上のチャンスと捉える

まず重要なのは、クレームに対する考え方を根本的に変えることです。クレームは営業マンとしての成長と、お客様との関係深化のための最高の機会と捉えましょう。

クレームが発生するということは、お客様があなたに期待を持っているからです。期待がなければ、わざわざクレームを言うことはありません。つまり、クレームはお客様からの「もっと良くなってほしい」というメッセージなのです。

この視点を持つことで、営業マンとしてのスキルが総合的に向上します。クレーム対応を通じて身につくのは、傾聴力、問題解決力、提案力、そして何より顧客の真のニーズを見抜く力です。これらのスキルは、新規開拓でも既存顧客フォローでも必ず活かされます。

私が指導したある車販売の営業マンは、クレーム対応スキルを身につけた結果、お客様との会話の質が劇的に向上しました。相手の話を最後まで聞く習慣がつき、本当のニーズを汲み取れるようになったことで、提案の精度が上がり、成約率が35%向上したのです。

また、クレーム対応の経験を積むことで、営業マンとしての自信も大幅に向上します。「どんな困難な状況でも解決できる」という自信がつくと、新規開拓での堂々とした立ち振る舞いや、高額商品の提案時の説得力にも好影響を与えます。

クレーム対応は営業スキルの総合格闘技と言えるでしょう。この機会を最大限に活用することで、あなたの営業力は飛躍的に向上していきます。

4-2.誠実さと率直さでお客様の心を開く

堤式アプローチの核となるのは、徹底的な誠実さと率直さです。お客様に対して嘘をつかない、隠し事をしない、できないことはできないとはっきり伝えることが基本方針です。

「正直に申し上げますと、この件については私どもに不備がございました」「現状では完全な解決は難しいのですが、こちらの方法であれば改善できます」といった具合に、率直に状況を伝えましょう。

この誠実な対応こそが、お客様の心を開く鍵になります。私自身の経験で最も印象に残っているのは、住宅営業時代に遭遇したクレームです。新築住宅の設備に不具合があり、お客様から厳しいお叱りを受けました。

その時、私は包み隠さず「設計段階での確認不足が原因でした。完全に私どもの責任です」と率直にお詫びし、具体的な改善策と今後の再発防止策を詳しく説明しました。さらに、「同じようなミスを二度と起こさないよう、チェック体制を見直します」と約束し、実際に社内システムを改善しました。

その結果、そのお客様は「こんなに誠実に対応してくれる営業マンは初めてだ」と言ってくださり、その後5年間で親戚・知人を8名紹介していただき、すべて契約に至ることができました。総契約金額は2億円を超え、私の営業人生において最も価値のある関係となったのです。

営業マンが本音で向き合ってくれると感じた時、お客様も本音で応えてくれるようになり、真の信頼関係が生まれます。この経験が、私の営業哲学の核となっています。

4-3.問題解決を通じて真の価値提供を実現する

最後に重要なのは、単なる問題解決を超えて、お客様にとって真に価値のある提案をすることです。クレームの背景にある本当のニーズを見つけ出し、それを満たす解決策を提示しましょう。

例えば、商品の不具合に対するクレームであっても、なぜその商品を選んだのか、何を実現したかったのかを深く聞くことで、より本質的な解決策が見えてきます。表面的な問題だけでなく、お客様の真の願いを叶えることを目指すのです。

私が指導したある保険営業マンの事例をご紹介します。お客様から「保険金の支払いが遅い」というクレームを受けた際、単に手続きを迅速化するだけでなく、なぜ急いでいるのかを詳しく伺いました。すると、お子様の医療費で家計が圧迫されており、教育資金にも不安を抱えていることが分かりました。

そこで保険金支払いの迅速化に加えて、教育資金準備のための学資保険と、医療費負担を軽減する医療保険の見直しを提案しました。お客様は「こんなに親身になって考えてくれるなんて」と感激され、追加で年間保険料120万円の契約をいただくことができました。

さらに驚くべきことに、その後このお客様は毎年のように知人を紹介してくださり、3年間で紹介からの契約金額は800万円を超えました。クレーム1件から生まれた価値が、営業マンの年収を大きく押し上げたのです。

このアプローチを実践することで、クレーム対応が単なるトラブル処理ではなく、お客様の人生をより良くするための価値提供になります。結果として、お客様との関係はクレーム前よりもはるかに深いものになり、長期的な営業成績向上につながるのです。

5.営業マンが身につけるべきクレーム予防策

さて、ここまでクレーム対応の方法について詳しく解説してきましたが、理想的なのはクレームが発生しないことです。適切な予防策を講じることで、多くのクレームは未然に防ぐことができます。

私が30年間の営業経験で学んだのは、優秀な営業マンほどクレーム予防に力を入れているということです。

営業現場で実践できる具体的なクレーム予防策をお伝えします。

営業マンが身につけるべき3つのクレーム予防策
  • 初回接客での期待値コントロール
  • 契約前の十分な説明と確認
  • 定期的なフォローアップの仕組み化

それでは、それぞれの予防策について詳しく解説していきます。

5-1.初回接客での期待値コントロール

クレーム予防で最も重要なのは、初回接客でお客様の期待値を適切にコントロールすることです。お客様の期待と現実のギャップがクレームの最大の原因だからです。

商品やサービスの良い面だけでなく、制約や注意点についても初回の段階で正直にお伝えしましょう。「この商品には〇〇という制約がございますが、△△という方法で改善できます」といった具合に、デメリットも含めて説明することが大切です。

期待値を正しく設定することで、お客様は納得した上で契約でき、後からのトラブルを大幅に減らすことができます。正直な説明をする営業マンの方が、長期的にはお客様からの信頼を得られるのです。

5-2.契約前の十分な説明と確認

契約前の説明と確認の徹底も、クレーム予防には欠かせません。お客様が完全に理解・納得した状態で契約を進めることで、後からの「聞いていない」「思っていたのと違う」といったクレームを防げます。

重要なポイントについては、口頭での説明だけでなく、書面でも確認していただくことをお勧めします。また、「何かご不明な点はございませんか」と必ず確認し、小さな疑問も解消してから次のステップに進みましょう。

時間をかけて丁寧に説明することは、一見非効率に思えるかもしれません。しかし、後からのクレーム対応に要する時間と労力を考えれば、事前の説明時間は必要な投資だと考えるべきです。

5-3.定期的なフォローアップの仕組み化

契約後の定期的なフォローアップも、クレーム予防には非常に効果的です。問題が大きくなる前に早期発見し、適切に対処することで、クレームを未然に防ぐことができます。

契約後1週間、1ヶ月、3ヶ月といったタイミングで、お客様の満足度や困っていることがないかを確認しましょう。定期的な連絡により、お客様は「この営業マンは私のことを気にかけてくれている」と感じ、信頼関係がより深まります。

以下の表は、私が推奨するフォローアップスケジュールの具体例です。商品やサービスの特性に合わせて調整してください。

タイミング フォロー内容 連絡方法 所要時間
契約後1週間 初期満足度確認・使い方説明 電話またはメール 10-15分
契約後1ヶ月 使用状況・問題点確認 電話 15-20分
契約後3ヶ月 総合満足度・改善要望確認 訪問または電話 20-30分
契約後6ヶ月 継続利用状況・追加ニーズ確認 訪問 30-45分
契約後1年 年次レビュー・更新相談 訪問 45-60分
※商品やサービスの特性に合わせてタイミングや内容を調整してください

また、このフォローアップの際に新たなニーズが見つかることも多く、追加契約や紹介につながる機会にもなります。クレーム予防だけでなく、売上向上にも直結する重要な活動なのです。

実際に私が指導した営業マンは、このスケジュール通りにフォローアップを実施することで、クレーム発生率を70%削減し、同時に追加契約率を40%向上させることに成功しています。

おわりに

クレーム対応は多くの営業マンにとって避けたいものですが、適切な知識とスキルを身につければ、むしろ最高の成長機会に変えることができます。

今回お伝えした基本の4ステップを確実に実践し、NG行動を避けることで、あなたのクレーム対応力は格段に向上するはずです。そして堤式アプローチを取り入れることで、クレームを信頼関係構築の機会として活用できるようになります。

クレーム対応が上手な営業マンは、お客様から真に信頼される営業マンです。表面的な営業テクニックよりも、お客様の問題を真摯に解決する姿勢こそが、長期的な成功につながります。

私が30年間で指導してきた営業マンの中でも、クレーム対応をマスターした人ほど、営業成績が安定し、顧客からの信頼も厚く、結果として収入も大幅に向上しています。ある営業マンは、クレーム対応スキルを身につけた結果、年収が前年比で60%アップし、社内表彰も受けるまでになりました。

クレーム対応の習得は、営業マンとしてのキャリア全体を変える力を持っています。お客様との深い信頼関係、安定した営業成績、そして営業マンとしての揺るぎない自信。これらすべてが、適切なクレーム対応から生まれるのです。

最後に覚えておいていただきたいのは、クレームは営業マンとしての人間性が最も問われる場面だということです。誠実さ、率直さ、そしてお客様への真の貢献を心がけることで、あなたもクレームを恐れない営業マンになれるでしょう。

明日からクレームの電話が鳴ったら、「またチャンスが来た」と思えるような営業マンを目指してください。ぜひ今日から実践し、お客様との信頼関係をより深いものにしてください。あなたの営業人生が、より充実したものになることを心から願っています。