不動産営業辞めたいと思ったら試す3つの営業術を30年のプロが伝授

もう不動産営業を辞めたい…。そう思ったことがある方は少なくないと思います。

不動産営業の世界は、厳しいノルマ、不安定な収入、長時間労働など多くの課題を抱えています。実際に厚生労働省の調査によると、不動産業界で働く人の45.6%が転職を考えているというデータもあります。

私は大手ハウスメーカーで営業として15年、その後マネージャーとして15年、計30年間不動産業界で働いてきました。数百名の営業マンを指導し、トップセールスからスランプに悩む営業マンまであらゆるケースを見てきました。

この記事では、不動産営業を辞めたいと感じる根本的な理由と具体的な対処法、そして正しいやり方で結果を出すための方法を紹介します。辞める・辞めないの判断材料だけでなく、今すぐ試せる具体的な営業メソッドもお伝えします。

どんな状況でも、自分でキャリアを選択する力をつければ、営業職で成功するか、納得して転職するか、自信を持って決断できるようになります。

この記事で分かること
  • 不動産営業を辞めたくなる9つの理由と具体的な対処法
  • 不動産営業で結果を出すためのプロ直伝の営業術
  • どうしても辞めたい場合の正しい転職戦略
  • あなたに最適な選択をするための自己診断法

目次

1.不動産営業を辞めたいと思う9つの理由と具体的な対処法

不動産営業を辞めたいと感じる理由は人それぞれですが、多くの方に共通する悩みがあります。まずはその理由を理解し、具体的な対処法を考えることが重要です。

厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、不動産業界の平均年収は約408万円です。年齢とともに上昇する傾向がありますが、成果を出せなければ低い水準にとどまります。

ここからは、不動産営業を辞めたいと思う主な理由と、私がこれまで30年間で培った経験に基づく具体的な対処法をご紹介します。

1-1.営業ノルマが厳しすぎる問題への対処法

不動産営業の最大の悩みは厳しいノルマです。月間や四半期ごとのノルマが達成できないとプレッシャーを感じ、「もう辞めたい」と思うことも多いでしょう。

  • 初回接客でクロージングを狙う
  • 接客時間以外は準備に費やす
  • 競合他社との比較表を徹底的に作成する

ノルマを達成するための最も効果的な方法は、初回接客でクロージングすることです。初回接客で売上を決めることができれば、ノルマ達成への道が大きく開けます。

私の経験上、営業の成功は「準備」にかかっています。接客時間以外のすべての時間を準備に費やすくらいの意識が必要です。具体的には、競合他社の商品との徹底的な比較表を作り、どんな質問にも即答できるようにしておきましょう。

1-2.給料が安定しないことへの対処法

不動産営業の給与体系は基本給+歩合制が一般的で、売れなければ収入が大きく下がります。この不安定さが大きなストレスとなっています。

安定した収入を得るには、毎月コンスタントに成約を決める営業パターンを確立することが重要です。具体的には、見込み客の発掘→初回接客→クロージングの流れを最短で実行できるようにします。

初回接客で「お客様と家族のような信頼関係」を構築することが鍵です。このために、お客様の立場に立って本当に価値ある提案をすることを徹底してください。私の指導した営業マンたちは、この方法で成約率を大幅に向上させ、安定した収入を実現しています。

1-3.休みが不定期でプライベートが犠牲になる問題への対処法

不動産営業は土日祝日が繁忙期となり、プライベートな時間が犠牲になりがちです。厚生労働省のデータによると、不動産業界の平均月間実労働時間は150時間です。

休日を確保するためには、平日の商談効率を上げることが重要です。そのためには「お客様は何を求めているのか」を徹底的に考え、無駄な営業活動をなくすことが必要です。

また、上司にしっかりと休みの希望を伝えることも大切です。「成果を出している営業マン」は発言力があります。まずは結果を出し、計画的に休みを取る体制を整えましょう。私のチームでは、事前に休みの計画を立て、チーム全体でフォローする仕組みを作ることで、休日の確保と売上の両立を実現してきました。

1-4.クレーム対応のストレスへの対処法

不動産営業ではクレーム対応が避けられません。お客様の人生の大きな買い物である不動産取引では、小さな不満も大きなクレームに発展することがあります。

クレーム対応で最も重要なのは、初期対応の速さと誠実さです。問題が発生したら、まず謝罪し、具体的な解決策を提示しましょう。

クレームの多くは「説明不足」から生じています。契約前にデメリットを含めた誠実な説明をしておくことで、後々のクレームを大幅に減らすことができます。私の経験では、最初に「こういったリスクもあります」と伝えることで、むしろ信頼関係が強化され、成約率も上がります。

1-5.パワハラやセクハラがひどい職場での対処法

不動産業界では残念ながらパワハラやセクハラが発生することがあります。特に体育会系の社風が強い会社では、時に行き過ぎた指導や言動が見られることも事実です。

パワハラやセクハラを受けた場合、まず証拠を残すことが重要です。日時、場所、内容、証人などを記録しておきましょう。無理に耐える必要はなく、社内の相談窓口や労働基準監督署などの外部機関に相談することも検討してください。

パワハラの多くは、実は成果を出せていないことから生じる場合があります。売上を上げて「使えない部下」ではなく「優秀な部下」になることで、状況が改善することもあります。ただし、どうしても改善しない環境であれば、転職も視野に入れるべきです。あなたの心と体の健康が最優先です。

1-6.体育会系の社風が合わない場合の対処法

不動産業界には体育会系の社風を持つ会社が多く、朝礼での大声や厳しい上下関係などに馴染めないと感じる方も少なくありません。

体育会系の社風に対応するには、まず会社の文化を理解し、必要最低限のルールは守ることが大切です。ただし、自分のスタイルを完全に変える必要はありません。結果を出すことができれば、多くの場合、個性は認められます。

私の経験では、成績が良い営業マンは自分なりのスタイルを確立しています。朝礼の大声が苦手なら、別の形で熱意を示すことも可能です。たとえば、徹底的な準備や丁寧な顧客フォローなど、自分の強みを活かした営業スタイルを構築しましょう。

1-7.営業に成果が出ないストレスへの対処法

成果が出ないことは、不動産営業マンにとって最大のストレス要因です。特に入社後数ヶ月?1年程度は成果が出にくく、自信を失いがちです。

成果を出すためには、「正しい営業手法」を身につけることが不可欠です。営業は才能ではなく科学です。基本的な営業のプロセスとテクニックを学び、実践すれば、必ず成果は出ます。

具体的には、「初回接客」に全力を注ぐことが重要です。顧客は9割が初回で購入を決めるという心理があります。お客様の悩みや要望を丁寧にヒアリングし、その場でニーズに合った提案ができるよう準備しておきましょう。この点については、次章でより詳しく解説します。

1-8.メンタルが疲弊してしまった場合の対処法

営業ノルマや長時間労働、人間関係などの複合的なストレスにより、メンタルが疲弊してしまうことがあります。これは決して珍しいことではなく、多くの営業マンが経験しています。

メンタルが疲弊した場合は、無理をせず一度立ち止まることが大切です。適切な休息を取り、必要であれば医療機関に相談することも検討してください。

また、自分一人で悩まずに、信頼できる同僚や上司、家族に相談することも効果的です。私が指導してきた営業マンたちも、一時的なスランプやメンタル面での苦労を経験していますが、適切な休息と周囲のサポートにより回復し、再び成果を上げられるようになっています。

1-9.将来のキャリアに不安を感じる場合の対処法

「この先ずっと不動産営業を続けていけるのか」という将来への不安を感じている方も多いでしょう。特に30代以降、キャリアについて考え始める時期には、この悩みが強くなります。

不動産営業で身につけたスキルは、実は多くの分野で活かせる汎用的なものです。交渉力、傾聴力、提案力、問題解決能力など、営業で培ったスキルは、転職後のキャリアでも大きな武器になります。

また、不動産業界でのキャリアパスとしては、営業から管理職へ、あるいは独立して自分の不動産会社を持つという道もあります。不動産業は社会になくてはならない産業であり、持続的な需要があります。今の会社で成長できるかどうかを見極め、必要なら別の環境での可能性も検討しましょう。

2.不動産営業を辞める前に試すべき3つの営業術

前章では不動産営業を辞めたくなる理由と対処法について解説しました。しかし、多くの場合、営業がうまくいかない根本的な原因は「正しい営業方法を知らない」ことにあります。

不動産営業は決して才能や特殊なスキルによって成功するものではありません。営業はサイエンス(科学)であり、正しい理論とテクニックを学べば、誰でも結果を出すことができます。「口下手」「メンタルが弱い」といった要素は関係ありません。

ここからは、私が30年間の経験で培い、多くの営業マンに教えてきた3つの営業術をご紹介します。これらを実践すれば、あなたも不動産営業で成果を上げられるようになるでしょう。

不動産営業で結果を出すための3つの営業術
  • 初回接客で成約を決める「一撃必殺」の営業術
  • スペック表を戦略的に活用した顧客獲得法
  • 顧客心理を理解した「小さなYES」の積み重ね術

2-1.初回接客で成約を決める「一撃必殺」の営業術

不動産営業の最大の秘訣は、初回接客で成約を決めることです。9割の顧客は無意識のうちに初回接客時に購入を決断すると言われています。

初回接客時にきっちりクロージングを決めるためには、次の3つがポイントとなります。

初回接客で成約を決めるポイント
  • 雑談は2割、本題は8割に抑える
  • 初回から価格を提示する
  • 顧客の心理的ハードルが低い時に核心を突く

雑談は2割、本題は8割に抑える

初回接客の成功のカギは、雑談を2割に抑え、本題を8割にすることです。「本日は何のために来店されましたか?」と直接尋ね、顧客のニーズに迅速に応えることが重要です。

初回から価格を提示する

初回で価格を提示することも大切です。「見積もりを出すのは早すぎる」と考える営業マンは多いですが、高額商品の購入では価格が最優先事項です。目安の金額でも提示することで、商談を有利に進められます。

顧客の心理的ハードルが低い時に核心を突く

顧客の心理的ハードルが最も低いのは初回接客時です。この時に核心を突いた質問をし、必要な情報を得られれば、スムーズに成約に結びつけることができます。

2-2.スペック表を戦略的に活用した顧客獲得法

スペック表は、自社優位のポジショニングを作るための強力なツールです。競合との客観的な比較を可能にし、顧客自身が正しい判断を下せるようにします。

効果的なスペック表作成のポイントは次のとおりです。

効果的なスペック表作成のポイント
  • 自社商品の強みが明確になる項目を選定する
  • 「一般的に重視される」という言葉で価値観を誘導する
  • 競合の短所を客観的に指摘する

自社商品の強みが明確になる項目を選定する

効果的なスペック表を作るには、自社商品の強みが明確になるよう項目を選定することが重要です。例えば、サッシの性能や断熱性能など、自社が優れている点を比較項目として設定します。

「一般的に重視される」という言葉で価値観を誘導する

スペック表を提示する際は、「一般的に重視されるポイントはこちらです」と顧客の価値観を誘導しましょう。そして「多くのお客様がこの点を重視されています」と、社会的証明を活用することで説得力が増します。

競合の短所を客観的に指摘する

競合他社との比較では、短所を冷静に指摘しつつ、メーカー名を出さずに説明すると信頼感を得られます。「この選択肢は○○の点で劣ります」と具体的に伝えることで、顧客は自然に競合を選択肢から外すようになります。

2-3.顧客心理を理解した「小さなYES」の積み重ね術

不動産営業で成約を勝ち取るには、顧客の「YES」を積み重ねていくアプローチが効果的です。大きな決断の前に、小さな承諾を重ねることで、最終的な成約への心理的抵抗を減らすことができます。

まず、「契約」という言葉を適切に使うことが重要です。初回接客では笑顔で軽いトーンを意識し、「契約ですね?」と冗談交じりに使うことで、顧客の心理的ハードルを下げられます。

さらに、購入後の具体的な生活イメージを描かせることも効果的です。「床暖房があれば、お子さんも安心して快適な冬を過ごせますね」というように、商品の特徴だけでなく、顧客の生活がどう変わるかを伝えましょう。

「ゴルディロックス効果」を利用した3つの提案も有効です。選択肢が3つあると真ん中が選ばれやすいという心理効果を活用し、販売したい商品を真ん中に配置します。この方法により、5割が真ん中を、3割が高額商品を選ぶようになり、売上が向上します。

3.不動産営業で結果を出す人と出せない人の決定的な違い

前章では具体的な営業術について解説しましたが、それらを実践するためには、結果を出せる営業マンの思考法と行動パターンを理解することが重要です。

実は、営業の成果は才能や運ではなく、明確な行動原理に基づいています。私が30年間で観察してきた数百人の営業マンたちの中で、トップセールスとそうでない人には明確な違いがありました。

その決定的な違いと成功法則を理解することで、あなたも不動産営業で確実に結果を出せるようになります。

3-1.結果を出す人の3つの特徴

不動産業界で結果を継続的に出している営業マンには、共通の特徴があります。

トップセールスに共通する3つの特徴
  • 徹底的な準備をする習慣がある
  • 営業活動の優先順位を明確にしている
  • お客様視点で誠実に対応する

トップセールスの最大の特徴は「徹底的な準備」です。接客時間以外のすべてを準備に費やします。競合他社の情報収集、市場動向の分析、顧客ニーズの予測など、あらゆる質問に即答できるよう備えています。

また、彼らは優先順位を明確にして行動します。購入意欲の高い顧客に集中し、見込みのない顧客には時間を使いません。この「見極め」と「一点集中」により、効率的に成果を出しています。

さらに、常にお客様視点で誠実に対応します。利益だけを考えず、本当にお客様に合った提案をします。「この商品は合わないかもしれません」と正直に伝えることで、逆に信頼を得て長期的な関係を構築しています。

3-2.成果が出ない人が陥る5つの思考パターン

反対に、成果を出せない営業マンには特徴的な思考パターンがあります。

成果が出ない人に共通する5つの思考パターン
  • 「営業はセンスだ」と思い込んでいる
  • 「初回は信頼関係構築のため」と先送りする
  • 全ての顧客に同じ労力をかける
  • 商品知識だけで勝負しようとする
  • 自分の話したいことを一方的に話す

成果が出ない営業マンの多くは「営業は生まれ持ったセンスだ」と誤解しています。これは単なる言い訳であり、正しい方法を学べば誰でも成果を出せます。

また、「初回は信頼関係構築のため」と思い込み、クロージングを先送りします。しかし、購入意欲が最も高いのは初回接客時です。この機会を逃すと成約率は大幅に下がります。

さらに、全ての顧客に同じ労力をかけるという間違いも多いです。トップセールスは購入意欲の高い顧客を見極め、そこに時間を集中します。

商品知識だけに頼る営業マンも多いですが、お客様が求めているのは「何を買うか」より「誰から買うか」です。商品特性より、お客様の求める価値を理解することが重要です。

3-3.初心者でも再現できる成功の法則

不動産営業での成功は、特別な才能がなくても再現可能です。以下の法則を実践すれば、初心者でも確実に成果を上げられます。

誰でも再現できる営業成功の3ステップ
  • 日々の準備に投資する
  • 初回接客でクロージングを意識する
  • 数より質の営業活動に集中する

まず、接客時間の3倍の時間を準備に使いましょう。情報収集、競合分析、提案資料の作成など、お客様と会う前の準備が成果を左右します。私の指導した営業マンは、毎日30分でも準備の時間を確保することで、短期間で成果が向上しました。

次に、初回接客から契約を視野に入れた対応を。「次回のアポイントが目標」ではなく、「今日契約していただくなら何が必要か」を常に考えます。初回で最終決定の場と捉え、最高の準備で臨みましょう。

そして、見込み客を厳選し、質の高い営業活動に集中。すべての顧客に同じ対応をするのではなく、購入意欲の高い顧客を見極め、集中的にアプローチします。「この方は本気で検討している」と感じたら、全力を尽くすことです。

これらの法則は特別な才能がなくても実践できます。私が指導した新人営業マンたちも、この方法で短期間に成果を上げてきました。

3-4.実際の成功事例から学ぶ

ここまで解説してきた成功法則は、単なる理論ではなく、実際に多くの営業マンが成果を上げてきた実践的なものです。ここでは、私が実際に指導した営業マンの具体的な成功事例をご紹介します。

不動産営業マンの成功事例
  • 新人営業マンが3ヶ月で売上トップに
  • スランプから這い上がり年間MVPを獲得
  • 体育会系の社風に馴染めなかった営業マンの逆転

新人営業マンが3ヶ月で売上トップに

入社1年目のAさんは、半年間一度も契約が取れず、上司からの厳しい叱責に毎日落ち込み、退職を考えていました。そんなAさんに「接客時間の3倍の準備をする」ことと「初回接客でクロージングを狙う」という二つのポイントを徹底指導しました。

Aさんは顧客の質問に即答できるよう、競合他社の商品情報や地域の相場など、あらゆる情報を徹底的に収集・整理しました。そして初回接客では、顧客心理に合わせた「小さなYES」を積み重ねる手法を実践。その結果、わずか3ヶ月で社内トップの成績を達成し、年間新人賞を獲得しました。

スランプから這い上がり年間MVPを獲得

営業歴5年のBさんは、かつてはトップセールスでしたが、家庭の事情で一時的に仕事に集中できない時期があり、半年間成績が落ち込んでいました。周囲からは「燃え尽き症候群だ」と言われ、自信を失っていました。

Bさんには「スペック表を戦略的に活用した顧客獲得法」を徹底的に指導しました。自社商品の強みが明確になるスペック表を作成し、顧客が自然に競合他社を選択肢から外す提案方法を実践したのです。その結果、わずか2ヶ月で成績が回復し、その年の年間MVPを獲得するまでに至りました。

体育会系の社風に馴染めなかった営業マンの逆転

新卒入社のCさんは、大声での朝礼や厳しい上下関係など、職場の体育会系の社風に馴染めず、毎日出社するのが苦痛でした。営業成績も下位で、「この仕事は自分に合わない」と悩んでいました。

Cさんには自分の強みを活かした営業スタイルの確立を提案しました。大声を出すのが苦手な代わりに、丁寧な資料作成と徹底的な準備で顧客に安心感を与える方法です。

特に「顧客心理を理解した提案術」を実践し、静かながらも説得力のある営業スタイルを確立しました。結果、入社2年目で社内表彰を受け、今では後輩の指導も任されています。

これらの事例は、正しい方法を学び実践すれば、どんな状況からでも成果を上げられることを証明しています。あなたも今の状況に悩んでいるなら、正しい営業術を身につけ、実践することで状況を変えることができるでしょう。

4.どうしても不動産営業を辞めたい場合の正しい転職戦略

前章では不動産営業で成果を上げるためのマインドセットや行動パターンについて解説しました。これらを実践することで多くの方は成果を出せるようになりますが、それでもどうしても不動産営業を辞めたいと考えている方もいるでしょう。

私はまず正しい営業法を実践して成果を出すことをおすすめしますが、それでも環境や適性の問題で転職を選択することも時には必要です。厚生労働省の雇用動向調査によると、不動産業界の離職率は13.8%と報告されています。

もし転職を決意したなら、不動産営業で培ったスキルを最大限に活かせる転職先を選び、正しいプロセスで退職することが大切です。ここでは、不動産営業経験者に最適な転職戦略をご紹介します。

4-1.不動産営業スキルを活かせる5つの転職先

不動産営業で身につけたスキルは、実は多くの業界で高く評価されます。

不動産営業スキルを活かせる5つの転職先
  • 金融業界(銀行、保険会社など)
  • 建設業界(ハウスメーカー営業など)
  • 不動産テック企業
  • インテリア・住宅設備メーカー
  • 異業種の営業職(法人営業など)

金融業界(銀行、保険会社など)

金融業界は不動産業界との親和性が高い転職先です。特に住宅ローンを扱う銀行や信用金庫では、不動産知識を持つ人材は重宝されます。顧客への提案力や交渉力も直接活かせるでしょう。

実際に私の部下だった営業マンの中には、メガバンクの住宅ローン専門部署に転職し、不動産知識を武器に活躍している人がいます。金融業界は基本給が安定しており、ワークライフバランスも比較的取りやすいのがメリットです。

建設業界(ハウスメーカーなど)

建設業界やハウスメーカーも、不動産営業経験者に適した転職先です。すでに住宅に関する知識があるため、スムーズに業務に馴染めることが多いです。また、クライアントとの折衝経験も大きな武器になります。

建設業界は今後も安定した需要が見込まれ、特に施工管理や現場監督などの職種は慢性的な人材不足です。不動産営業で培った顧客対応力は、施主とのコミュニケーションに役立ちます。

不動産テック企業

最近注目されているのが不動産テック企業です。テクノロジーを活用した不動産サービスを提供する企業では、現場経験のある人材が求められています。業界知識と営業スキルを組み合わせることで、高い評価を得られるでしょう。

例えば、オンライン仲介サービスやAIを活用した物件評価サービスなど、新しい不動産ビジネスモデルを展開する企業が増えています。こうした企業では、従来の不動産営業とは違った形で、あなたの経験を活かせます。

インテリア・住宅設備メーカー

インテリア・住宅設備メーカーも、不動産営業経験者の転職先として検討価値があります。住宅に関する知識や顧客ニーズの理解が直接活かせる環境です。

特に営業職では、ハウスメーカーやリフォーム会社への法人営業など、これまでとは逆の立場で経験を活かせます。住宅購入者の気持ちを理解していることは、商品開発やマーケティング部門でも重宝されるスキルです。

異業種の営業職(法人営業など)

異業種の営業職、特に法人営業は、不動産営業で培ったスキルを広く活かせる選択肢です。営業の基本スキルは業界を問わず通用します。

法人営業は個人向け営業と異なり、複数の決裁者と関わるなど複雑なプロセスがありますが、提案力や交渉力、そして粘り強さは不動産営業と共通しています。また、一般的に法人営業は不動産営業より労働環境が整っていることが多いのもメリットです。

これらの転職先はあくまで一例です。自分のキャリアビジョンや価値観に合わせて、最適な選択をしましょう。重要なのは、不動産営業で身につけたスキルが多くの分野で通用することを理解し、自信を持って次のステップに進むことです。

4-2.退職時に必ず行うべき3つの行動

退職を決めたら、次のキャリアにつながるよう正しいプロセスで行動することが重要です。

退職時に必ず行うべき3つの行動
  • 円満退社を心がける
  • 引き継ぎを丁寧に行う
  • 自分の成果を数字で整理しておく

円満退社を心がける

どんな状況でも円満に退社することを心がけてください。不動産業界は意外と狭く、今後のキャリアで再び接点が生まれる可能性があります。感情的にならず、冷静に退職の意思を伝えましょう。

引き継ぎを丁寧に行う

引き継ぎを丁寧に行うことが重要です。担当していた顧客情報や進行中の案件などを整理し、後任者にわかりやすく引き継ぎましょう。これは社会人としての基本的なマナーであり、評判にも影響します。

自分の成果を数字で整理しておく

自分の成果を具体的な数字で整理しておくことが次のキャリアに役立ちます。「月間〇件の成約を達成」「前年比〇%の売上増加に貢献」など、具体的な実績を箇条書きにしておきましょう。これらは転職活動でのアピールポイントになります。

4-3.転職面接で営業経験をポジティブに伝える方法

不動産営業経験を次のキャリアでポジティブに活かすためには、面接での伝え方が重要です。

面接で営業経験をポジティブに伝えるポイント
  • 転職理由を前向きに伝える
  • 具体的な数字で実績を示す
  • 営業で培ったスキルを具体的に説明する

転職理由は必ず前向きに伝えましょう。「不動産営業が嫌だった」ではなく、「新しい業界で自分のスキルを活かしたい」「より専門性を高めたい」など、ポジティブな理由を準備してください。

また、具体的な数字で実績を示すことも効果的です。「月間〇件の契約を獲得」「前年比〇%の売上増加」など、具体的な成果を示すことで説得力が増します。

さらに、不動産営業で培ったスキルを具体的に説明することで、転職先での活躍をイメージしてもらいましょう。「顧客ニーズの把握力」「提案力」「交渉力」「クレーム対応力」など、汎用的なスキルをアピールすることが重要です。

面接では前職の批判は避け、学んだこととこれからの目標に焦点を当てましょう。そうすることで、前向きで意欲的な人材という印象を与えることができます。

5.あなたに最適な選択をするための自己診断法

前章では転職を検討している方向けに、不動産営業スキルを活かせる転職先や退職時の心構えを解説しました。ただ、実際に「辞めるべきか続けるべきか」という判断は簡単ではありません。

不動産営業を続けるか辞めるかの判断は、感情だけでなく客観的な自己分析に基づいて行うことが大切です。私の30年間の経験上、多くの営業マンが一時的な感情で判断して後悔するケースを見てきました。

この章では、あなた自身が本当に不動産営業に向いているのか、続けるべきか辞めるべきかを客観的に判断するための方法をご紹介します。自分自身を冷静に分析することで、納得のいく選択ができるようになります。

5-1.続けるべきか辞めるべきかを判断する5つの質問

不動産営業を続けるべきか辞めるべきかを判断するには、以下の5つの質問に正直に答えてみてください。

続けるか辞めるかを判断する5つの質問
  • 正しい営業手法を学び、実践してみたか
  • 会社の問題と、営業職そのものの問題を区別できているか
  • 自分のキャリアビジョンと今の仕事は一致しているか
  • 今の環境で自分の価値観を実現できるか
  • 経済的な見通しは立っているか

正しい営業手法を学び、実践してみたか

まず、「正しい営業手法を学び、実践してみたか」を考えましょう。多くの場合、成果が出ないのは間違った方法で営業しているからです。本記事で紹介した営業術を試してみて、それでも成果が出なければ、適性を考え直す価値があります。

会社の問題と、営業職そのものの問題を区別できているか

次に、「会社の問題と、営業職そのものの問題を区別できているか」を考えます。パワハラなどの会社固有の問題と、営業職の本質的な問題は別物です。会社の問題なら転職で解決できますが、営業そのものが合わないなら職種転換を検討すべきです。

自分のキャリアビジョンと今の仕事は一致しているか

また、「自分のキャリアビジョンと今の仕事は一致しているか」も重要です。5年後、10年後のあなたはどうなっていたいですか?不動産営業を続けることでそれに近づくなら、一時的な困難は乗り越える価値があります。

今の環境で自分の価値観を実現できるか

今の環境で自分の価値観を実現できるか」というのも大切な質問です。例えば正直さや誠実さを重視する方が、ごまかしや過剰な表現を求められる環境では苦しむでしょう。自分の価値観と合う環境かどうかも見極めてください。

経済的な見通しは立っているか

最後に「経済的な見通しは立っているか」を考えましょう。不動産営業を辞めた後の生活設計ができているか、次の収入源の見込みはあるかなど、現実的な部分も重要です。感情だけで決断せず、財務面も冷静に検討しましょう。

5-2.営業マンとしての適性を知るセルフチェック

不動産営業に向いている人には、いくつかの共通点があります。以下のチェックリストで自分の適性を確認してみましょう。

不動産営業の適性チェックリスト
  • 人と接することが好きである
  • 断られても落ち込まずに次に進める
  • 自己管理能力がある
  • 新しいことを学ぶことに抵抗がない
  • 目標達成のために努力を継続できる

人と接することが好きである

「人と接することが好きである」は基本です。毎日様々なお客様と接する不動産営業では、コミュニケーションを楽しめることが重要です。しかし、営業はテクニックで成り立つ部分も大きいので、必ずしも社交的である必要はありません。

断られても落ち込まずに次に進める

「断られても落ち込まずに次に進める」回復力も重要です。営業では断られることが日常茶飯事です。これを個人的な拒絶と受け止めず、次の機会に活かせる人が成功します。

自己管理能力がある

「自己管理能力がある」ことも不可欠です。不動産営業は自由度が高い分、自分で時間管理ができることが求められます。計画的に行動し、約束を守れる人が適性があると言えます。

新しいことを学ぶことに抵抗がない

「新しいことを学ぶことに抵抗がない」姿勢も重要です。不動産業界は法改正や市場動向の変化が頻繁にあります。常に新しい知識を吸収し、自分のスキルをアップデートする意欲が必要です。

目標達成のために努力を継続できる

「目標達成のために努力を継続できる」粘り強さも必須です。成果が出るまでには時間がかかることも多いため、諦めずに継続できる人が最終的に成功します。

これらの項目に多く当てはまる人は、不動産営業に適性がある可能性が高いです。しかし、当てはまらない点があっても、意識して改善することで成果を上げることは十分可能です。

5-3.営業で成功するために必要なマインドセット

最後に、不動産営業で成功するために必要なマインドセットについてお伝えします。

成功する営業マンのマインドセット
  • 営業はサイエンス(科学)であると理解する
  • 顧客の幸せを最優先に考える
  • 常に学び、成長し続ける姿勢を持つ

営業はサイエンスであると理解する

「営業はサイエンスである」という認識が最も重要です。営業は特別な才能ではなく、原理原則と法則に基づく再現性のある科学です。正しい理論とテクニックを学べば、誰でも結果を出せるという確信を持ちましょう。

顧客の幸せを最優先に考える

「顧客の幸せを最優先に考える」姿勢が必要です。売上やインセンティブのためではなく、顧客に最適な提案をすることで信頼を得られます。それが結果的に高い成約率につながります。

常に学び、成長し続ける姿勢を持つ

「常に学び、成長し続ける姿勢」が不可欠です。市場環境や顧客ニーズは常に変化します。新しい知識やスキルを積極的に吸収し、自分自身をアップデートし続ける人が長期的に成功します。

これらのマインドセットを持ち、正しい営業術を実践すれば、不動産営業で確実に成果を上げることができます。辞めるか続けるかの決断の前に、このマインドセットで改めて取り組んでみることをおすすめします。

6.明日から実践できる具体的アクションプラン

ここまで不動産営業を辞めたい理由と対処法、成功するための営業術、そして自己診断法について解説してきました。最後に、この記事で学んだことをすぐに実践できるよう、具体的なアクションプランをご紹介します。

まずは3日間、次の3ステップを実践してみてください。短期間でも正しく実践すれば、必ず変化を感じることができるでしょう。

明日から実践する3ステップ
  • 【Step1】1日30分の準備時間を確保する
  • 【Step2】スペック表を作成し直す
  • 【Step3】初回接客のシナリオを書き換える

【Step1】1日30分の準備時間を確保する

まず最初に、毎日30分の「準備の時間」を確保してください。朝の出社時、昼休み後、または帰宅前など、自分に合った時間帯を選びましょう。この時間は、競合他社の情報収集、市場動向の分析、顧客ニーズの予測など、接客前の準備に充てます。

準備の質を高めるには「お客様が何を知りたいか」を考えることが重要です。「もしお客様に○○と質問されたら、どう答えるか」というシミュレーションを行いましょう。たった30分の準備でも、積み重ねれば大きな差になります。

【Step2】スペック表を作成し直す

次に、自社商品と競合他社を比較するスペック表を作成し直します。これまでのスペック表があれば、それを見直し、より自社商品の強みが明確になる項目を選定しましょう。

具体的には、サッシの性能、断熱性能、アフターサービスの内容など、自社が優れている点を比較項目として設定します。そして「一般的に重視されるポイントはこちらです」と顧客の価値観を誘導できる言葉も準備しておきましょう。

【Step3】初回接客のシナリオを書き換える

最後に、初回接客のシナリオを書き換えましょう。多くの営業マンは「初回は信頼関係構築だけ」と考えがちですが、初回こそ成約を決める絶好のチャンスです。

まず、雑談は全体の2割に抑え、早めに本題に入るよう意識します。そして、顧客の質問に対する回答や、提案内容をより具体的にしましょう。特に「購入後の具体的な生活イメージ」を伝えることを意識してください。

この3ステップを3日間実践するだけでも、お客様の反応に変化が現れるはずです。そして、その小さな変化が自信につながり、より大きな成果へとつながっていきます。まずは今日から始めてみましょう。

おわりに

この記事では、不動産営業を辞めたいと思った時の対処法から、結果を出すための具体的な営業術、そして転職を検討する際の戦略まで幅広くご紹介してきました。

「辞めたい」と思うことは決して恥ずかしいことではありません。多くの営業マンが同じ悩みを抱えています。しかし、その感情に流されず、客観的に状況を分析し、最善の選択をすることが大切です

不動産営業は正しいやり方で取り組めば、非常にやりがいがあり、高収入も得られる素晴らしい職業です。私自身、30年間この仕事を続けてきて、多くのお客様の人生に関わり、成果を上げる喜びを味わってきました。

また、不動産営業で身につけたスキルは、転職後のキャリアでも大きな武器になります。「人生の大きな買い物」をサポートする経験を通じて培った提案力、交渉力、問題解決能力は、あらゆるビジネスシーンで価値を発揮します。

もし今、結果が出ていないのであれば、まずは本記事で紹介した営業術を実践してみてください。営業はサイエンスであり、才能ではありません。正しい方法を学び、実践すれば、誰でも結果を出すことができます。

しかし、それでも合わないと感じるなら、無理に続ける必要はありません。あなたの持つ営業スキルは多くの分野で活かせます。前向きな気持ちで新しい道を探してみてください。

最後に、どのような選択をするにしても、あなた自身が納得し、充実感を得られる道を選ぶことが最も重要です。この記事があなたの人生の選択の一助となれば幸いです。

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