営業でお客様の心をつかむ方法|即実践できる5つのコツ

「お客様との会話がうまく続かない…」「どうすれば信頼してもらえるのだろう…」

お客様の心をつかむことができず、悩んでいる営業マンの方は多いのではないでしょうか。私も営業を始めた頃は同じように悩んでいました。

しかし実は、お客様の心をつかむのは難しいことではありません。営業は才能ではなく、正しい理論とテクニックを学べば誰でも確実に結果を出すことができる「サイエンス」なのです。

私は30年間の営業経験の中で、多くの営業現場を経験し、数百名もの営業マンを指導してきました。その中で分かったのは、お客様の心をつかめない営業マンのほとんどが、「会話の仕方」で間違いを犯しているということです。

この記事では、すぐに実践できる具体的な会話術から、お客様との信頼関係を築くための基本姿勢、そして営業における科学的な原理原則まで、体系的にお伝えしていきます。

この記事で分かること
  • お客様の心をつかむための具体的な会話テクニック
  • 信頼関係を築くために必要な3つの基本姿勢
  • なぜお客様の心をつかめないのか、その原因と対策
  • 初回の商談で9割の顧客の心をつかむ方法
  • 絶対に避けるべき営業マンの言動

1.実践ですぐに使える!お客様の心をつかむ5つの会話術

お客様の心をつかむためには、まず会話の仕方を改善する必要があります。

ここでは、私が数百名の営業マンを指導してきた経験から特に重要だと感じている5つの会話術をご紹介します。これらは明日からすぐに実践できる具体的なテクニックです。

1-1.人柄の良さを直感的に伝える第一声の作り方

お客様との初対面の印象は、その後の商談を大きく左右します。特に最初の3秒で、お客様はあなたという人物を判断します。

そのため、第一声では「この営業マンは信頼できそうだ」という印象を直感的に与えることが重要です。

具体的には、次のような要素を意識してください。声のトーンは低めで落ち着いた感じを意識し、スピードはゆっくりめにします。「おはようございます」「こんにちは」といった挨拶は、語尾を少し上げ気味にすることで、自然な親しみやすさが伝わります。

また、第一声を発する際の表情も重要です。目を見て話すことは基本ですが、視線をギラギラさせるのではなく、優しい目元を意識します。そして、自然な笑顔を心がけましょう。作り笑顔は逆効果です。

例えば、私が新人営業マンだった頃に先輩から教わった方法として、心の中で「久しぶりに会う親戚のおじさん」をイメージしながら話しかけるというものがありました。これを意識するだけで、声のトーンや表情が自然と柔らかくなり、お客様に好印象を与えることができます。

第一声の具体例と解説

【良い例】
「おはようございます。○○と申します。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます」

※低めの声でゆっくり話し、感謝の気持ちを込めることで、誠実さが伝わります

【悪い例】
「おはようございます!今日は素晴らしい商品のご案内に参りました!」

※場に合わない大きさと高さの声になりがちで、商品の売り込みを急ぐ印象を与えてしまいます

第一声成功のための3つのポイント
  • 挨拶の前に深い呼吸を1回して、落ち着いた声が出せる状態を作る
  • 相手の目を見る際は、眉間から鼻筋のラインを意識する
  • 自己紹介は必ず社名→名前の順番で行う

1-2.会話をスムーズに続けるための質問の仕方

第一声で良い印象を与えた後、大切になってくるのが質問の仕方です。お客様との会話を途切れさせないためには、適切な質問をすることが重要です。

営業で使う2種類の質問方法
  • クローズドクエスチョン:「はい」「いいえ」で答えられる質問
  • オープンクエスチョン:自由に答えられる質問

会話の導入では、まずクローズドクエスチョンで緊張をほぐし、その後オープンクエスチョンで話を広げていくのが効果的です。

例えば、「今日はお時間はございますか?」(クローズド)から始めて、「どのようなお悩みをお持ちでしょうか?」(オープン)というように展開していきます。

この流れによって、お客様は自然と会話に引き込まれていきます。

また、質問をする際は「〜ですよね?」という誘導的な言い方は避けましょう。これは無意識のうちにお客様を追い詰めてしまう表現です。代わりに「〜はいかがでしょうか?」という表現を使うことで、お客様が自由に答えやすい雰囲気を作ることができます。

商談の各段階で使うべき質問を下記の表にまとめました。これらを意識して使い分けることで、自然な会話の流れを作ることができます。

▼商談の段階と質問の使い分け
商談の段階 クローズドクエスチョン オープンクエスチョン
導入時 「お時間はございますか?」「ご興味はありますか?」 「本日はどのようなご用件でしょうか?」
ニーズ確認時 「以前にご検討されたことはございますか?」 「どのような点でお困りですか?」
クロージング時 「この内容でよろしいでしょうか?」 「他にご不明な点はございますか?」
※状況に応じて、クローズドとオープンを組み合わせることで、より自然な会話が生まれます

1-3.信頼感を高める相槌と返しの技術

質問の後に重要になってくるのが、相槌と返しの技術です。お客様の話を真剣に聞いている姿勢を示すことで、信頼関係を深めることができます。

ただし、単に「はい、はい」と言うだけの相槌では逆効果です。お客様の言葉を受け止めた上で、具体的な言葉を返すことが大切です。例えば、「そうですね、○○というところが特に気になられたのですね」といった具合です。

また、相槌を打つタイミングも重要です。お客様の話の途中でタイミングを計りながら打つ小さな相槌と、話の区切りで打つ大きな相槌を使い分けることで、自然な会話の流れを作ることができます。

特に効果的なのは、お客様の言葉を活かした返しです。例えば、お客様が「コストが気になって…」とおっしゃった場合、「コストについて具体的にご説明させていただきますね」と、お客様の言葉をそのまま使って返すことで、より深い共感を示すことができます。

実践で使える相槌と返しのフレーズ集

この相槌と返しのフレーズは、状況に応じて使い分けることで効果を発揮します。

シーン別おすすめフレーズ
【お客様が悩みを話されているとき】

  • 「なるほど、そのようなお悩みがあったのですね」
  • 「確かに、その点は大変重要なポイントですね」
  • 「○○についてが特に気になられるということですね」

【お客様が要望を伝えられているとき】

  • 「はい、○○という部分を特に重視されているのですね」
  • 「なるほど、具体的なイメージをお持ちなのですね」
  • 「その点については、ぜひ詳しくお聞かせいただけますか」

【お客様が不安を表明されているとき】

  • 「そのようなご不安をお持ちなのですね」
  • 「はい、その点については私もしっかりと確認させていただきます」
  • 「ご心配な点について、具体的に教えていただけますでしょうか」

1-4.お客様の本音を引き出す沈黙の活用法

相槌と返しの技術を身につけた上で、さらに重要になってくるのが「沈黙」の活用です。多くの営業マンは沈黙を怖がり、お客様の話を遮って自分の話を始めてしまいます。しかし、沈黙はむしろ営業の武器として活用できるのです。

お客様が話を止めた後の3秒間は、特に重要です。すぐに次の話題を振ったり、自分の話を始めたりするのではなく、お客様の言葉を受け止めるように静かに待ちます。この「間」があることで、お客様は自分の言葉が確実に届いていると感じ、より深い話をしてくれるようになります。

また、難しい質問をされた時も、すぐに答えるのではなく、「そうですね…」と一呼吸置いてから回答するようにしましょう。この短い沈黙が、あなたが真剣に考えている姿勢を伝え、より信頼感のある対応につながります。

1-5.心を開いてもらうための共感フレーズ集

お客様との会話の中で、適切な共感フレーズを使うことで、さらに心を開いてもらうことができます。ただし、単なるリアクションではなく、お客様の気持ちに寄り添った言葉選びが重要です。

例えば、お客様が「いろいろ検討しているのですが…」とおっしゃった時、「そうですよね、慎重に検討されるのは当然のことだと思います」と返すことで、お客様の立場に立った理解を示すことができます。

さらに、「私も以前、同じように悩んだことがあります」という経験談を交えることで、より深い共感を生むことができます。ただし、あくまでもお客様の状況に合わせた短い話に留め、自分の話が長くなりすぎないように注意しましょう。

実践のためのステップアップガイド

会話術の習得は、一度にすべてを完璧にしようとするのではなく、段階的に身につけていくことが大切です。以下のステップで実践していきましょう。

会話術習得の3ステップ
【Step1】第一声の改善(1週間)

  • 毎朝、鏡の前で第一声の練習を3回行う
  • その日会う全ての人に意識して第一声を届ける

【Step2】質問と傾聴の実践(2週間)

  • クローズド→オープンの流れを意識する
  • 相槌と返しのバリエーションを増やす

【Step3】沈黙と共感の活用(2週間)

  • 意識的に3秒の間を作る練習をする
  • お客様の言葉を用いた共感フレーズを準備する

これらのステップを1ヶ月かけて実践することで、自然な流れで会話術を身につけることができます。焦らず、一つ一つ確実に習得していきましょう。

このように、第一声から始まり、質問、相槌、沈黙、共感フレーズまでの5つの会話術を意識することで、お客様との信頼関係を築くことができます。ここまでご紹介した会話術は、すぐに実践できる具体的なテクニックでした。

では次に、これらの会話術の土台となる、より本質的な「基本姿勢」についてお伝えしていきます。

2.お客様との信頼関係を築く3つの基本姿勢

会話術を身につけることは大切ですが、それだけでは真の信頼関係を築くことはできません。なぜなら、どんなに優れた会話術を使っても、その根底にある価値観が間違っていては、必ずどこかでほころびが出てしまうからです。

ここからは、私が30年の営業経験の中で、最も大切だと実感してきた3つの基本姿勢についてお伝えしていきます。

2-1.「嘘をつかない、隠し事をしない」という誠実さ

嘘や隠し事は、一時的には商談を有利に進められるかもしれません。しかし、それは砂上の楼閣にすぎません。

例えば、「この商品の在庫はあとわずかです」という言葉で焦らせて契約を急がせたとしても、後でその嘘が発覚すれば、お客様との信頼関係は完全に崩れ去ってしまいます。

真の営業とは、お客様に正直に向き合い、商品やサービスの良い点も悪い点も包み隠さず伝えることです。そうすることで、お客様は「この営業マンは本当のことを話してくれている」と感じ、深い信頼関係を築くことができます。

2-2.「できないことはできない」とはっきり伝える勇気

誠実さと並んで重要なのが、「できないことはできない」とはっきり伝える勇気です。

多くの営業マンは、お客様の要望を断ることで契約を失うことを恐れます。しかし、実現できない約束をしてしまうことの方が、はるかに大きなリスクを伴います。

例えば、納期に関して「なんとかします」と曖昧な返事をして、結局間に合わなかった場合、お客様の信頼を大きく損なうことになります。そうではなく、「申し訳ありませんが、その納期では確実な対応が難しいです」と正直に伝え、その上で実現可能な代替案を提示する方が、むしろお客様からの信頼を得ることができます。

2-3.「お客様の幸せ」を第一に考える価値観

そして最も重要な基本姿勢が、「お客様の幸せ」を第一に考える価値観です。

私たち営業マンの仕事は、単に商品やサービスを売ることではありません。お客様の人生をより良いものにすることが、私たちの本当の使命なのです。

この価値観があれば、売上やノルマに縛られることなく、本当にお客様にとって最適な提案ができるようになります。時には「今はまだ購入しない方がいい」とアドバイスすることもあるでしょう。しかし、そのような誠実な姿勢こそが、長期的な信頼関係を築く土台となるのです。

では次に、これらの基本姿勢を踏まえた上で、より具体的な営業の原理原則についてお伝えしていきます。

3.営業は科学である!心をつかむために知っておくべき原理原則

これまでお伝えしてきた会話術や基本姿勢は、すべて科学的な根拠に基づいています。営業は特別な才能ではなく、誰でも正しい理論とテクニックを学べば必ず結果を出せる「サイエンス」なのです。

3-1.なぜ心をつかめないのか?原因と対策

多くの営業マンが「お客様の心をつかめない」と悩んでいますが、その原因は意外なところにあります。それは、顧客心理を科学的に理解していないことです。

お客様が営業マンに対して警戒心を持つのは当然のことです。なぜなら、人は見知らぬ人からの突然のアプローチに対して、本能的に身構えてしまうからです。

お客様の警戒心を解く科学的な手法
  • 第一声は低めの声で、ゆっくり話す
  • 視線は目元を合わせつつ、優しい表情を意識する
  • 相手の言葉を活かした返しで、深い共感を示す

これらの手法は、人間の潜在意識に働きかける科学的なアプローチです。単なる経験則ではなく、人間心理の研究に基づいた確実な方法なのです。

では次に、さらに重要な科学的事実についてお伝えしていきます。

3-2.9割の顧客は初回で決める!だから心をつかむ

先ほどお伝えした科学的アプローチに加えて、さらに重要な科学的事実があります。

それは、お客様の9割が、初回の商談で「この営業マンと取引するかどうか」を決めているということです。

これは私が30年の営業経験の中で、数千件の商談を分析して分かったことです。最初の商談で信頼関係を築けなかった場合、その後どれだけ努力しても、契約に至る可能性は著しく低くなってしまいます。

だからこそ、初回の商談では「商品説明」や「価格交渉」よりも、まず「信頼関係の構築」を最優先すべきなのです。先ほどお伝えした会話術や基本姿勢を、特に初回の商談で徹底することが、成約率を大きく高めることにつながります。

初回商談の成功シナリオ

ここまでお伝えした内容を、実際の商談の流れに落とし込んでみましょう。

90%の成功率を実現する初回商談の基本の流れ
【導入部分(最初の5分)】

  • 第一声で信頼感を醸成
  • 簡単な自己紹介と今日の目的を伝える
  • クローズドクエスチョンで場を和ませる

【本題への展開(次の10分)】

  • オープンクエスチョンでニーズを探る
  • 適切な相槌と返しで信頼関係を深める
  • 3秒ルールを意識して「間」を活用する

【まとめと次のステップ(最後の5分)】

  • 聞いた内容を簡潔に整理して伝える
  • 次回のアポイントを自然な流れで設定
  • 明確な期待値を持っていただく

実際の会話例:

営業マン

「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。○○の△△と申します(第一声)。今日は△△についてお話をお伺いできればと思うのですが、お時間はいかがでしょうか?(クローズドクエスチョン)

営業マン

「それでは、普段の業務の中で、どのような課題を感じていらっしゃいますか?(オープンクエスチョン)

営業マン

「なるほど、○○という部分が特に気になっているということですね(相槌と返し)。その点について、もう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか?」

3-3.お客様の心をつかむために絶対にやってはいけないこと

ここまで、お客様の心をつかむための具体的な方法をお伝えしてきましたが、最後に、絶対に避けるべき行動についてお伝えします。これらは信頼関係を一瞬で壊してしまう危険な行動です。

営業で絶対に避けるべき3つの行動
  • お客様の話を遮って自分の話を始めること
  • 即決を迫るような強引な売り込み
  • 「お客様のため」という建前で、自分の都合を押しつけること

お客様の話を遮ることについて

これはお客様に「この営業マンは自分の話を聞く気がない」という印象を与えてしまいます。お客様の話は、たとえ長くても最後まで丁寧に聞くようにしましょう。

強引な売り込みについて

「今日なら特別価格です」「今すぐ決めていただかないと間に合いません」といった言葉で焦らせようとすることは、逆効果です。

自分の都合を押しつけることについて

営業目標やノルマに追われて、本当はお客様に必要のない商品やサービスを勧めてしまうことは、決してあってはいけません。

3-4.実践事例に学ぶ成功のポイント

ここまでお伝えしてきた内容を、実際の成功事例を通じて確認していきましょう。

新人営業マンがわずか3ヶ月で結果を出した事例
【導入前の状況】

  • 1日3件のアポイントを取るも、成約率は2%
  • お客様との会話が続かず、商品説明で躓く
  • 「営業向いていないかも」と悩んでいた

【実践したこと】

  • 第一声の練習を毎朝必ず実施
  • アポイント前に必ず呼吸を整える習慣化
  • お客様の言葉をメモして共感フレーズを作成

【変化した結果】

  • 成約率が15%にアップ
  • お客様との会話が自然に続くように
  • 「信頼できる」と言っていただけるように

このように、正しい理論とテクニックを着実に実践することで、必ず結果は付いてきます。大切なのは、焦らず、諦めず、一つ一つのスキルを確実に身につけていくことです。

おわりに

お客様の心をつかむことは、確かに簡単なことではありません。しかし、この記事でお伝えした内容を実践すれば、必ず結果を出すことができます。

お客様の心をつかむための3つの要素
  • 会話術:第一声、質問、相槌、沈黙、共感フレーズを効果的に活用する
  • 基本姿勢:誠実さ、正直さ、お客様の幸せを第一に考える価値観を持つ
  • 原理原則:営業は科学であり、正しい理論とテクニックで必ず成果が出る

これら3つの要素をバランスよく身につけることで、確実にお客様の心をつかむことができます。明日からの営業活動で、ぜひ実践してみてください。

そして最後に一つ。営業の本質は、お客様の人生をより良いものにすることです。その志を持ち続けることが、結果として最高の営業成果につながっていくのです。