「明日の商談を成功させたい」「いつも商談がうまくいかない」そんな悩みを抱える営業マンの方は多いのではないでしょうか。
実は、営業は決して「話術」や「センス」に左右される仕事ではありません。私は30年間の営業経験の中で、⼤学を出たての新⼈営業マンを含めて、数多くのトップセールスを育成してきました。その経験から⾔えるのは、効果的なセールストークは、誰でも学んで実践できる「技術」だという事実です。
本記事では、すぐに使えるセールストークの具体例から、効果的な話法の組み⽴て⽅まで、実践的な内容を詳しく解説します。これらは私が30年の営業経験で培った、数千人の営業マンを指導してきた実績に基づくものです。
▼この記事で分かること
- 商談シーン別の具体的なセールストーク例⽂
- 効果的な質問とヒアリングの⽅法
- 顧客の⼼をつかむトークの組み⽴て⽅
- トップセールスが実践する会話の基本原則
1.そのまま使える!シーン別セールストークの例文集
商談を成功に導くためには、それぞれのシーンで適切な⾔葉を選ぶ必要があります。ここでは、私が実際の営業現場で効果を確認してきた、具体的なセールストークをご紹介します。
1-1.商談開始時の第一声と展開例
商談の成否は、最初の⼀⾔で⼤きく変わります。いきなり本題に⼊るのが最も効果的なのです。
【基本の展開例】

「本⽇は、○○についてお話をお聞かせいただきたくお時間を頂戴しました。まず、現在の状況についてお聞かせいただけますでしょうか?」
このように直接的に切り出すことで、顧客は「この営業マンは時間を無駄にしない」と好印象を持ちます。さらに、こちらの真摯な姿勢も伝わります。
また、商品説明の前に「現在の状況」を聞くことで、顧客は⾃然と悩みや課題を話してくれるようになります。これにより、その後の商品提案がスムーズになります。
1-2.ヒアリングを深掘りする際の効果的な質問例
顧客の本当のニーズを引き出すためには、適切な質問が⽋かせません。表面的な回答に満足せず、さらに深掘りする質問を投げかけることで、より具体的な課題が⾒えてきます。
【効果的な深掘り質問】

「それは、具体的にどのような場面で困っているのでしょうか?」

「その課題によって、どのような影響が出ているのでしょうか?」

「理想の状態としては、どのようなイメージをお持ちでしょうか?」
このような質問をすることで、顧客は⾃⾝の課題をより深く考えるようになります。そして、その過程で「この商品が必要だ」という認識が⾃然と芽⽣えていきます。
特に重要なのは、質問の後の「間」です。顧客の回答を急かさず、じっくりと考える時間を与えることで、より本質的な課題が⾒えてきます。
また、顧客の言葉を受けて「つまり、○○ということでしょうか?」と確認する質問も効果的です。これにより、顧客は「自分の課題をよく理解してくれている」と感じ、信頼関係が深まっていきます。
1-3.商品説明時の魅力的な伝え方例
効果的なヒアリングができたら、次は商品説明です。ここで重要なのは、仕様や機能を説明するのではなく、顧客の課題解決に焦点を当てた説明をすることです。
【魅力的な伝え方の基本例】

「先ほどお聞きした○○という課題については、こちらの商品で解決することができます。具体的には…」
このように、ヒアリングで聞いた課題と商品の特徴を結びつけることで、顧客は自然と納得感を得られます。
また、仕様説明をする際も、数字だけを説明するのではなく、「これにより、○○が実現できます」という具体的なメリットまで言及することが大切です。顧客は機能や性能そのものではなく、それによって得られる価値を求めているからです。
1-4.価格提示時の好印象な言い回し例
価格提示は商談の中でも特に重要なシーンです。ここでのポイントは、価格を後回しにせず、できるだけ早い段階で提示することです。
【好印象な価格提示の例】

「標準価格は○○円となりますが、初回ご契約の場合は△△円でご提供させていただくことが可能です。」
価格を明確に伝えた後、すぐに具体的なメリットの説明に移ります。例えば、「この価格には、24時間対応のサポートも含まれています」といった具合です。
さらに、月々の支払額や、導入によって削減できるコストなども具体的に示すことで、顧客は価格に対する理解を深めやすくなります。
1-5.クロージング時の自然な誘導例
ここまでのステップを適切に踏んでいれば、クロージングは自然な流れで進められます。重要なのは、「売り込む」のではなく、顧客自身に「購入したい」と思ってもらうことです。
【自然な誘導の基本例】

「ここまでお話しさせていただいた内容で、ご不明な点はございますでしょうか?」

「もしよろしければ、具体的な導入の手順についてもご説明させていただけますが、いかがでしょうか?」
このように、顧客の反応を確認しながら、次のステップへと自然に進んでいきます。強引な押し付けは避け、顧客の意思を尊重する姿勢を保ちましょう。
また、「今なら」「期間限定」といった焦らせる文言は使わないことをお勧めします。代わりに「このような課題解決のため」という、顧客自身の目的に焦点を当てた表現を使うことで、より自然な流れでの成約が期待できます。
2.セールストークが効果を発揮する3つの前提条件
ここまで具体的なセールストークの例文を見てきましたが、それらが効果を発揮するためには、いくつかの重要な前提条件があります。私の30年の営業経験の中で、成功する営業マンと成功しない営業マンの違いは、まさにこの前提条件をしっかりと理解し、実践できているかどうかにありました。
重要な前提条件は以下の3つです。
- 顧客心理を理解すること
- 商品知識を徹底的に身につけること
- 真摯な姿勢で臨むこと
では、それぞれについて詳しく解説していきます。
2-1.顧客心理を理解すること
セールストークで最も重要なのは、顧客の心理を理解することです。高額な商品やサービスを検討している顧客は、常に「失敗したくない」という不安を抱えています。
例えば、住宅を購入する顧客の場合、ローンを組んで何千万円という大きな買い物をします。当然、慎重にならざるを得ません。そして「この営業マンを信用して大丈夫だろうか」「他にもっと良い選択肢があるのではないか」と考えています。
このような顧客心理を理解していれば、「安心感を与える」「信頼を獲得する」という視点でトークを組み立てることができます。逆に、この理解が不足していると、いくら良い商品でも顧客の心に響かないトークになってしまいます。
2-2.商品知識を徹底的に身につけること
セールストークの説得力を高めるためには、商品知識を徹底的に身につけることが欠かせません。ここで言う商品知識とは、単なる仕様やスペックの暗記ではありません。
重要なのは、「なぜその商品が優れているのか」「どのような場面で役立つのか」「他社製品と比べてどこが違うのか」といった本質的な理解です。私の経験では、商品知識が不足している営業マンは、顧客からの質問に対して「それは確認してご連絡します」という対応が増え、商談の流れが途切れてしまいがちです。
また、商品知識が豊富であれば、顧客の状況に合わせた具体的な提案ができます。

「この機能は、先ほどおっしゃった○○という課題の解決に役立ちます」
といった具合に、顧客の課題と商品の価値を結びつけた説明が可能になります。
2-3.真摯な姿勢で臨むこと
どれだけ優れたトークスキルを持っていても、顧客のためを思う真摯な姿勢がなければ、本当の信頼関係は築けません。
私が30年の営業経験で学んだことは、顧客は営業マンの「姿勢」を見ているということです。口先だけの営業マンなのか、本当に顧客のことを考えている営業マンなのか、顧客は驚くほど敏感に感じ取ります。
例えば、商品の短所や注意点も正直に伝える。競合他社の商品が合っているお客様には、そちらをおすすめする勇気を持つ。このような誠実な対応が、結果として長期的な信頼関係を築き、持続的な成果につながるのです。
3.初回商談で9割の成約を実現する話法の組み立て方
これまでの章で、セールストークの具体例や前提条件を見てきましたが、初回商談でクロージングまで持っていくためには、さらに戦略的な話法の組み立てが必要です。私は30年の営業経験の中で、初回商談での成約率9割という成果を上げてきました。
重要なのは、「初回だから様子見」という発想を捨てることです。なぜなら、高額商品における顧客の購買意欲は、初回商談時が最も高いからです。ここでは、その可能性を最大限に活かすための5つの具体的な手法をお伝えします。
こちらの5つです。
- 勇気を出していきなり本題に入る
- 小さなYESを積み重ねる質問手法
- 競合との差別化を図る戦略的な説明順序
- 価格への不安を解消する伝え方
- 自然な流れでクロージングする手法
それでは、順番に具体的な手法を見ていきましょう。
3-1.勇気を出していきなり本題に入る
世間話や雑談から始める商談は、ほぼ確実に失敗します。なぜなら、顧客は具体的な課題解決を求めてその場にいるからです。
例えば、住宅の購入を検討している顧客の場合、すでに情報収集を済ませ、具体的な検討段階に入っています。そのような顧客に対して「今日は暑いですね」といった世間話から始めることは、むしろマイナスになりかねません。
顧客が求めているのは、プロフェッショナルとしての対応です。だからこそ

「本日は○○についてご相談があるとのことでしたが、具体的にはどのようなことでしょうか?」
と、いきなり本題に入ることで、顧客の期待に応えることができます。
3-2.小さなYESを積み重ねる質問手法
初回商談を成功に導くためには、顧客の「YES」を徐々に積み重ねていく質問の技術が重要です。
具体的には、まず顧客が間違いなく「YES」と答える質問から始めます。「現状の課題を改善したいとお考えでしょうか?」といった具合です。このような質問に対して、顧客は必ず「はい」と答えます。
その後、

「では、具体的にどのような改善をお考えでしょうか?」
と掘り下げていきます。このように段階的に質問を重ねることで、顧客は自然と「この商品なら自分の課題が解決できる」という認識に至ります。
質問の順序を間違えると、顧客は防衛的になってしまいます。例えば、いきなり「ご予算はおいくらですか?」と聞くのは避けるべきです。まずは課題やニーズを明確にしてから、予算に関する話題に移るのが効果的です。
3-3.競合との差別化を図る戦略的な説明順序
小さなYESを積み重ねることができたら、次は商品説明へと移ります。ここで重要なのは、ただ商品の特徴を説明するのではなく、戦略的な順序で説明を組み立てることです。
まず最初に、自社商品の最大の強みを説明します。例えば「24時間365日のサポート体制」が強みなら、顧客の「安心して使いたい」というニーズに応える形でこの特徴を最初に伝えます。これにより、競合他社との明確な違いを印象付けることができます。
その後、2番目、3番目に重要な特徴へと説明を進めていきます。このとき、「つまり、○○ということです」と、専門的な説明を顧客の立場で言い換えることを忘れないようにしましょう。
3-4.価格への不安を解消する伝え方
価格の提示は、多くの営業マンが最後まで引っ張る傾向にありますが、これは大きな間違いです。価格は、基本的な商品説明が終わった時点で、できるだけ早めに提示すべきです。
なぜなら、顧客は価格を知らない状態では、具体的な検討に入れないからです。例えば「この商品はとても素晴らしいのですが、実は予算の倍以上する」となれば、それまでの説明が全て無駄になってしまいます。
価格を提示する際は

「標準価格は○○円ですが、初回契約特典として△△円でご提供できます」
というように、まず定価を示し、その後で実際の提供価格を伝えます。これにより、顧客は価格に対する具体的な判断基準を持つことができます。
3-5.自然な流れでクロージングする手法
ここまでの流れを適切に作れていれば、クロージングは決して難しいものではありません。重要なのは、顧客自身に「購入したい」という気持ちが自然と芽生えるような対話を重ねることです。
具体的には、

「ここまでのお話の中で、特に○○という点に関心を持っていただいたかと思いますが、導入のスケジュールについてもご説明させていただいてよろしいでしょうか?」
といった具合です。
この時、「今なら特別価格です」「今日中の決断でさらに値引きします」といった安易な値引き交渉は避けるべきです。それよりも

「御社の課題解決のために、具体的なスケジュールを立てさせていただきたい」
という提案の方が、顧客の信頼を得られます。
そして最後に、

「では、ご契約に向けて進めさせていただいてよろしいでしょうか?」
と、自然な流れでクロージングへと持っていきます。ここまでの信頼関係が築けていれば、多くの顧客は前向きな返答をしてくれるはずです。
4.トップセールスが実践する会話の基本原則
ここまで、セールストークの具体例や話法の組み立て方を見てきましたが、これらを効果的に機能させるためには、より本質的な「会話の基本原則」を押さえておく必要があります。
私が30年の営業経験で数多くのトップセールスを育成してきた中で、必ず意識させてきた原則が以下の4つです。これらの原則は、どんな商材でも、どんな状況でも変わることのない普遍的なものです。
- 中学生でも分かる言葉を使う
- 誠実さを感じさせる表現を選ぶ
- 顧客の立場で考え抜いた提案をする
- 短所も正直に伝える勇気を持つ
それでは、順番に詳しく解説していきます。
4-1.中学生でも分かる言葉を使う
専門用語を多用する営業マンは、ほぼ間違いなく成功しません。なぜなら、難しい言葉を使えば使うほど、顧客との心理的な距離が広がってしまうからです。
例えば「この商品は○○という特許技術を使用しており、従来比で△△%の効率化を実現します」という説明よりも、

「この商品を使うと、今かかっている手間が半分で済むようになります」
という説明の方が、顧客の心に響きます。
特に重要なのは、商品の価値を説明する際の言葉選びです。専門用語を使って「凄さ」を表現するのではなく、「これによって○○ができるようになります」という具体的なメリットを、分かりやすい言葉で伝えることが大切です。
4-2.誠実さを感じさせる表現を選ぶ
トップセールスに共通しているのは、誠実さが伝わる話し方をしているということです。これは決して、へりくだった話し方をするという意味ではありません。
例えば「この商品は○○の面で業界No.1です」という表現は、たとえ事実であっても誇大広告のように聞こえかねません。代わりに

「この商品の特徴は○○という点です。これにより、御社の△△という課題を解決できると考えています」
という表現なら、より誠実さが伝わります。
また、分からないことを「分かりません」と正直に伝えることも、誠実さを示す重要な要素です。「後で確認してご連絡します」と約束し、必ずその約束を守ることで、顧客からの信頼は着実に高まっていきます。
4-3.顧客の立場で考え抜いた提案をする
分かりやすい言葉や誠実な表現に加えて、トップセールスは必ず「顧客の立場」に立った提案をします。これは単に「お客様の気持ちになって」というような抽象的なことではありません。
例えば、ある商品の導入を提案する際、「この商品を入れることで、現場の社員の方々の仕事の流れはどう変わるのか」「導入時の教育にどれくらいの時間が必要か」「メンテナンスの手間はどうなるのか」といった、実務的な視点まで踏み込んで考えます。
また、「この商品を導入すれば御社の売上は○○%アップします」といった漠然とした提案ではなく、

「まず△△の部分から始めることで、最小限のリスクで効果を確認できます」
といった、具体的で現実的な提案をすることが重要です。
4-4.短所も正直に伝える勇気を持つ
完璧な商品やサービスは存在しません。だからこそ、短所も正直に伝えることが、本当の信頼関係を築く鍵となります。
例えば、

「この商品は○○という面では他社製品に劣りますが、その代わり△△という部分で圧倒的な強みがあります」
というように、短所と長所を包み隠さず説明します。このような誠実な説明こそが、顧客の信頼を獲得する近道なのです。
また、顧客によっては、

「実はこの商品は御社には向いていないかもしれません」
と伝える勇気も必要です。そうすることで、むしろ顧客からの信頼は高まり、長期的な取引関係を築くことができます。
おわりに
本記事では、セールストークの具体例から、話法の組み立て方、そして会話の基本原則まで、実践的な内容をお伝えしてきました。
営業は決して「才能」や「センス」で成功が決まる仕事ではありません。正しい技術と姿勢さえ身につければ、誰でも必ず結果を出すことができるのです。
私は30年の営業経験の中で、数多くの営業マンを見てきました。その中で確信を持って言えるのは、この記事でお伝えした内容を着実に実践することで、必ず成果は上がるということです。
まずは明日の商談から、これらの技術を一つずつ実践してみてください。そして、自分なりの「成功パターン」を見つけていってください。必ず、あなたの営業人生は大きく変わることでしょう。
コメントを残す