営業マンとして毎日頑張っているのに、なかなか思うような成果が出ないと悩んでいませんか?
私も同じ悩みを抱えていました。30年前、大手ハウスメーカーに転職してきた当時は、それまでゴルフ会員権の営業をやってきたとはいえ、住宅営業は全く違う世界。最初はなかなか契約を取ることができず、不安な日々を過ごしていました。
しかし、先輩や上司から学んだトークと、自分なりの工夫を重ねた結果、営業2年目には全国2000名以上の営業マンの中でトップ50に入るまでに成長することができました。その後はプレイヤーとして15年、現在マネージャーとしても15年、数百名の営業マンを育て、トップクラスの成績を残し続けています。
今回は、私が30年間の営業経験で培ってきた、成約率を高めるための実践的なトーク例をお伝えしていきます。特に、アポイント獲得から初回商談での信頼関係構築まで、具体的な会話例を交えながら解説していきます。
- アポイント電話での効果的な切り出し方
- 初対面での信頼関係の築き方
- 商品提案時の説得力を高める話し方
- 価格提示時の好反応を引き出すコツ
1.成約率を高める!商談フェーズ別トーク例集
高額商品の営業において、お客様との会話の質は成約率を大きく左右します。特に初回の商談では、お客様の期待が最も高まっているタイミング。このチャンスを逃さないためにも、フェーズに合わせた適切なトークを身につけることが重要です。
1-1.アポイント電話での効果的な切り出し方
アポイント電話は、お客様との最初の接点となる大切な機会です。この段階で信頼感を与えられるかどうかが、その後の商談の成否を決めます。
電話を切られやすい典型的な間違いは、「〇〇について説明させていただきたいのですが…」という曖昧な切り出し。これでは営業電話と警戒され、話を聞いてもらえません。
私の経験上、最も効果的なのは次のような切り出し方です。
「お客様が先日ご請求されました資料の件で折り返しのお電話をさせていただきました。ご検討状況について確認させていただきたいのですが、お時間よろしいでしょうか?」
このトークには3つの重要なポイントがあります。
- 「お客様からのアクション」に言及すること
- 「ご検討状況の確認」という明確な目的を伝えること
- 「お時間よろしいでしょうか?」と確認を入れること
【「お客様からのアクション」に言及する理由】
一方的な営業電話ではないことを示し、警戒心を和らげることができます。
【「ご検討状況の確認」という明確な目的を伝える理由】
漠然とした説明ではなく、具体的な用件があることを示すことで、お客様も応対しやすくなります。
【「お時間よろしいでしょうか?」と確認を入れる理由】
この一言で、お客様の都合を考慮している誠実な姿勢を示すことができます。
【具体的なNG/OK例】
NG例:「〇〇の件でご連絡させていただきました。少しお時間よろしいでしょうか?」
→理由が曖昧で警戒心を招きます
OK例:「先日ご覧いただいた、△△物件の南向きリビングについて、新しい情報が入りましたのでご連絡させていただきました。2分程度でご説明できますが、お時間よろしいでしょうか?」
→具体的な内容と所要時間を示すことで、応対しやすくなります
1-2.初対面での信頼関係構築トーク
初対面の商談では、最初の5分で信頼関係を築けるかどうかが勝負となります。
よくある失敗は、会社の説明や商品の素晴らしさを一方的に語ってしまうこと。これではお客様の心は開きません。
信頼関係を築くための効果的なトークの流れは次の通りです。
「本日は、お時間をいただきありがとうございます。先日の資料をご覧になって、具体的にどのような点に興味を持っていただけましたでしょうか?」
このような質問から始めることで、お客様が主役の商談であることを示せます。そして、お客様の発言から関心事を探り、次のように話を展開します。
「なるほど、〇〇の点にご興味をお持ちいただいたのですね。その観点でしたら、まずは△△についてお話させていただくのが良いかと思いますが、いかがでしょうか?」
このように、お客様の興味に沿った提案をすることで、「この営業マンは自分の話をきちんと聞いてくれている」という信頼感を醸成することができます。
1-3.商品提案時の説得力を高める会話術
ここまでお客様の興味や関心を引き出すことができたら、いよいよ商品提案です。しかし、ここで多くの営業マンが陥る失敗があります。それは、商品の特徴を一方的に説明してしまうことです。
説得力のある商品提案は、お客様の課題に対する解決策として示すことから始まります。私が30年の経験で最も効果的だと実感している提案の流れをお伝えします。
「先ほど〇〇についてお悩みとのことでしたが、その課題に対して、私どもではこのような解決方法をご提案させていただきます」
このように、お客様の課題に紐づけて提案することで、「自分のために考えてくれている」という印象を与えることができます。
さらに、提案の説得力を高めるために、次のような問いかけを入れていきます。
「このような解決方法について、どのようにお感じになりますでしょうか?もし気になる点などございましたら、ぜひお聞かせください」
このように途中で確認を入れることで、お客様の反応を見ながら説明を進められます。もし不安や疑問が出てきた場合は、次のように対応します。
「ご指摘の点について、具体的な事例を交えてご説明させていただきます。実は先日も同じようなご懸念をお持ちだったお客様が…」
具体的な事例を交えることで、お客様の不安を解消し、提案の実現可能性を示すことができます。
1-4.価格提示時の好反応を引き出す言葉選び
商品提案の流れができたところで、最も重要なのが価格提示のタイミングです。実は、価格は早めに提示した方が、むしろ信頼関係を築きやすいのです。
私の経験では、次のような切り出し方が最も効果的です。
「ここで具体的な金額のお話をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
この一言で、お客様の心の準備ができ、価格への抵抗感を和らげることができます。そして、価格を提示する際は以下のように伝えます。
「標準的な仕様で〇〇万円となります。ただし、先ほどお話しいただいたご要望を全て実現する場合は△△万円。逆に、必要最小限の仕様であれば□□万円からご提供させていただくことも可能です」
このように、複数の選択肢を示すことで、お客様自身が最適な価格帯を選べるようになります。厚生労働省の調査によると、営業職の平均給与は年々上昇傾向にありますが、その背景には、このような価格提示の質の向上も影響しているのです。
価格提示後は、必ず次のような確認を入れます。
「ご予算感としては、いかがでしょうか?もし気になる点がございましたら、ご遠慮なくおっしゃってください」
この言葉を添えることで、お客様は率直な感想を伝えやすくなります。そこから具体的な予算調整の話へと自然に展開できるのです。
2.トーク力を超える!「一撃必殺」の商談術
ここまで具体的なトーク例をお伝えしてきましたが、実は本当の成功は「トーク」以外の部分にあります。私がこれまでに指導してきた数千人の営業マンの中で、成果を上げている人に共通しているのは、「一撃必殺」の商談術を身につけていることです。
初回の商談で9割の成約を実現するには、表面的なトークスキルではなく、戦略的なアプローチが必要です。これから、私が30年の営業経験で培った「一撃必殺」の具体的な手法をお伝えしていきます。
2-1.雑談なしでいきなり本題に入る技術
多くの営業マンは「最初の雑談で関係性を作る」と考えています。しかし、これは大きな間違いです。お客様は限られた時間の中で、本当に必要な情報を得たいと考えています。
私は初回商談で次のように切り出します。
「本日は、ご検討中の〇〇について具体的なお話をさせていただきたいと思います。まず、どのような点を重視してお選びになられているのか、お聞かせいただけますでしょうか?」
このアプローチには明確な理由があります。マイナビの調査によると、営業職の中途採用において、即戦力となる人材の特徴として「時間の使い方が効率的」という点が上位に挙がっています。つまり、ビジネスの世界では、効率的なコミュニケーションが重視されているのです。
お客様の反応を見ていると、むしろ雑談なしでいきなり本題に入る方が、「この営業マンは時間を無駄にしない」という好印象を持たれることが多いのです。
2-2.相手の警戒心を解く情報提供法
ここまでに、雑談なしでいきなり本題に入る効果についてお伝えしてきました。
では、本題に入った後はどのように商談を進めていけば良いのでしょうか。そこで重要になってくるのが、「情報を与えるプロフェッショナル」としての立ち位置を確立することです。
具体的には、次のような切り口で情報提供を始めます。
「今の市場環境について、まずいくつか重要な情報をお伝えさせていただきます。これは、ご検討を進める上で必ず押さえておいていただきたいポイントになります」
このように、商品説明の前に市場環境や業界動向について情報提供することで、お客様は「この営業マンは単なる売り込みではなく、本当に役立つ情報を持っている」と感じ始めます。
さらに重要なのは、競合他社の情報も含めた中立的な情報提供です。
「競合他社の〇〇という商品も、△△という点では非常に優れています。一方で、私どもの商品は□□という特徴があり…」
このように公平な視点で情報を提供することで、お客様の警戒心は自然と解けていくのです。
2-3.スペック表を武器にする説明術
お客様の警戒心が解けてきたところで、いよいよ具体的な商品説明に入ります。ここで最も効果的なのが、スペック表を活用した説明です。
「それでは、具体的な商品の特徴についてご説明させていただきます。このスペック表をご覧ください」
効果的なスペック比較表の例 | |||
---|---|---|---|
比較項目 | 自社商品 | A社商品 | B社商品 |
耐久性(年) | 25 | 20 | 15 |
メンテナンス費 | 年5万円 | 年8万円 | 年7万円 |
保証期間 | 10年 | 5年 | 7年 |
初期投資 | 300万円 | 250万円 | 280万円 |
スペック表を出すタイミングは、お客様が情報を求め始めた瞬間です。なぜなら、この段階でお客様は「具体的な違いを知りたい」という欲求を持っているからです。
私は必ずスペック表を2枚用意します。1枚目は競合他社との比較表、2枚目は自社商品の詳細です。比較表を使って次のように説明します。
「このように、A社、B社、弊社の商品を横並びで比較してみますと、特に〇〇という点で大きな違いがございます。この違いは、実際の使用時に△△という形で影響してきます」
このような具体的な数値比較により、お客様は客観的な判断が可能になります。さらに、自社商品の詳細なスペック表を使って、次のように説明を深めていきます。
「先ほどお伺いした□□というご要望について、具体的にはこちらの仕様で対応が可能です。実際の数値をご覧いただけますでしょうか」
スペック表を使った説明の最大の効果は、お客様に「自分で判断した」という実感を持っていただけることです。
2-4.初回での即決を促す会話の組み立て方
ここまでの流れで、お客様の理解は大きく深まっています。「今決めることのメリット」を具体的に示すことで、自然な形での即決を促すことができます。
初回商談での即決を促すために、次の3ステップを意識しましょう。
- 【Step1】お客様の理解度を確認する
- 【Step2】具体的なメリットを提示する
- 【Step3】決断の合理性を説明する
【Step1】お客様の理解度を確認する
「ここまでのご説明で、ご不明な点はございませんでしょうか?特に気になる部分がございましたら、ぜひお聞かせください」
【Step2】具体的なメリットを提示する
「実は、今回ご検討いただいている商品について、今月中にご契約いただいた場合、〇〇というメリットをご用意できます。ただし、これは期間限定の特典となっております」
【Step3】決断の合理性を説明する
「もちろん、じっくりとご検討いただくことも可能です。ただ、先ほどお伺いした△△というご要望については、今回のご提案内容が最も適していると確信しております。その理由は…」
このように、お客様の要望に立ち返りながら、今決断することの合理性を説明していくのです。
3.30年の営業経験が証明する成功の法則
ここまで具体的な商談の進め方をお伝えしてきましたが、最後に私が30年の営業経験で培った、本質的な成功の法則をお伝えします。短期的な売上だけでなく、長期的な信頼関係を築くために欠かせない要素をご説明していきます。
3-1.売れる営業マンの「間」の使い方
多くの営業マンは「沈黙」を怖がります。しかし、本当に売れる営業マンは、むしろ積極的に「間」を活用しています。
私が独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査データを分析したところ、管理職になった営業マンの多くが「お客様の考える時間を大切にすること」を成功要因に挙げています。
具体的な「間」の使い方は次の通りです。
「この商品の特徴についてご説明させていただきましたが…(3秒間の沈黙)…いかがお感じになられましたでしょうか?」
このように意図的に間を作ることで、お客様は自分の考えを整理する時間を得られます。特に重要な提案の後は、最低でも3秒は待つようにしています。
また、お客様が考え込んでいる時は、決して遮らないことが重要です。その代わり、次のように声をかけます。
「お考えの時間が必要でしたら、私の説明は一旦ここで区切らせていただきますが、いかがでしょうか?」
3-2.世間話で終わらせない質問術
このように「間」を効果的に使うことで、お客様との会話は自然と深まっていきます。しかし、ただ会話が続くだけでは意味がありません。
そこで次は、会話を具体的な商談へと展開させる「質問の連鎖」という手法についてお伝えします。これは、お客様の何気ない発言から、具体的なニーズを掘り起こしていくテクニックです。
例えば、お客様が「最近、在宅勤務が増えまして…」と話された場合、次のように質問を重ねていきます。
「在宅勤務が増えると、仕事のスペースについてもいろいろとお考えになるかと思いますが、現在の環境でお困りの点などはございますでしょうか?」
そして、お客様の回答に対してさらに掘り下げます。
「なるほど、作業スペースが狭いとのことですね。具体的に、どのような場面で不便を感じていらっしゃいますか?」
このように質問を重ねることで、表面的な会話から具体的な商談へと自然に展開させることができます。ただし、ここで重要なのは、決して押しつけがましい質問にならないよう、お客様の表情や反応を見ながら進めることです。
3-3.競合との差別化を図るトーク戦略
質問による深い理解ができたら、次は競合との差別化です。しかし、ここで多くの営業マンが陥る失敗は、競合他社の悪口を言うことです。
私が実践している差別化戦略は、次のようなアプローチです。
「業界全体の動向をお伝えしますと、現在このような流れになっています。その中で、各社それぞれの強みを活かした提案をされているのですが…」
このように業界全体の状況を俯瞰的に説明することで、お客様は冷静な判断ができるようになります。そして、自社の提案については次のように伝えます。
「私どもは、特に〇〇という点に力を入れています。その理由は、お客様の△△というニーズに、最も効果的に応えられると考えているからです」
このように、お客様のニーズを起点に自社の特徴を説明することで、自然な形での差別化が可能になります。
3-4.長期的な信頼を築く本質的営業術
最後に、もっとも大切な点をお伝えします。「一時的な売上」ではなく「長期的な信頼関係」を築くことが、本質的な営業術の核心です。
私が30年の営業経験で確信している長期的な信頼を築く3つの原則は以下の通りです。
- お客様の立場で考え、時には購入を思いとどまっていただく勇気を持つ
- 表面的なニーズだけでなく、本質的な課題解決を提案する
- 一度の商談で完結せず、継続的なサポートを提供する
【お客様の立場で考え、時には購入を思いとどまっていただく勇気を持つ】
「この商品は確かに素晴らしい特徴を持っていますが、お客様の現在の状況を考えますと、もう少し慎重に検討していただいた方が良いかもしれません」
【表面的なニーズだけでなく、本質的な課題解決を提案する】
お客様が求めているものの背景にある本当の課題を見つけ出し、それに対する最適な解決策を提案していきます。
【一度の商談で完結せず、継続的なサポートを提供する】
契約後も定期的なフォローアップを行い、お客様の変化するニーズに応え続けることで、真の信頼関係を築くことができます。
このような姿勢こそが、お客様との長期的な信頼関係を築く最も確実な方法なのです。
- お客様の発言をメモしながら聞けているか
- 説明の途中で理解度を確認しているか
- 専門用語を使う際は必ず解説を加えているか
- お客様の反応に合わせて話すスピードを調整しているか
- 重要なポイントは必ず復唱して確認しているか
これらのポイントを意識するだけでも、トークの質は大きく向上します。毎日の商談後、この項目に照らして振り返りを行うことで、着実にスキルアップを図ることができます。
おわりに
営業という仕事は、単なる商品の販売ではありません。お客様の人生や事業により良い変化をもたらす、やりがいのある profession(専門職)なのです。
本記事でお伝えした内容は、私が30年の営業経験で培ってきた実践的なノウハウです。これらを実践することで、必ず成果は上がります。しかし、最も大切なのは、お客様のために本気で考え、行動する姿勢です。
理論や技術は重要ですが、それ以上に「誠実さ」と「本気度」が成功の鍵となります。皆様も、ぜひ自分なりの営業スタイルを確立し、お客様と共に成長していってください。
営業は、あなたの人生をより豊かにする素晴らしい職業です。本記事が、そんな営業という仕事で成功を収めるための一助となれば幸いです。
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