「法人営業と個人営業、どちらが自分に向いているのだろう?」「今の営業職で本当にやっていけるのだろうか?」そんな不安や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
私は大手ハウスメーカーの営業所長として30年にわたり、法人営業と個人営業の両方で成果を上げ続けてきました。営業とは単なる「押し売り」や「コミュニケーション術」ではなく、時流や数字、心理学を駆使した再現性のある技術なのです。
本日は、私の経験をもとに、法人営業と個人営業の表面的な違いだけでなく、それぞれの営業の本質と成功の法則についてお伝えしていきます。きっと、あなたの営業スタイルを見直すきっかけになるはずです。
▼この記事でわかること
- 法人営業と個人営業の具体的な違い
- それぞれの営業における成功の秘訣
- 自分に合った営業スタイルの見つけ方
- 今の営業職で成果を出すための具体策
1.法人営業と個人営業の違いを徹底比較!
まずは法人営業と個人営業の基本的な違いを理解することから始めましょう。この違いを正しく理解することが、営業での成功への第一歩となります。
1-1.取引規模と商談スピードの違い
法人営業と個人営業で最も大きな違いは、取引規模と商談のスピードです。
法人営業の場合、一件あたりの取引金額は数百万円から数億円規模になることも珍しくありません。その代わり、商談期間は3ヶ月から半年、時には1年以上かかることもあります。なぜなら、企業の意思決定には様々な部署や役職者の承認が必要だからです。
一方、個人営業は一件あたりの取引金額は比較的小さくなりますが、商談のスピードは速いのが特徴です。特に高額商品を扱う場合、9割の顧客は初回の商談で購入を決めます。私の経験から言うと、2回目、3回目と商談を重ねるほど、契約率は下がっていく傾向にあります。
1-2.求められる提案内容とスキルの違い
法人営業と個人営業では、求められる提案内容やスキルセットが大きく異なります。
法人営業では、相手企業の業績向上や課題解決に直結する提案が求められます。例えば、「この設備を導入することで、年間の人件費を2000万円削減できます」といった具体的な数値に基づく提案が重要です。そのため、財務や業界知識、さらには提案書作成能力が必須となります。
一方、個人営業では、お客様の生活や人生をより豊かにする提案が重要です。例えば、住宅営業であれば「この間取りなら、お子様が小学生になっても十分な学習スペースが確保できます」といった、将来を見据えた具体的な生活シーンの提案が効果的です。その分、お客様の夢や不安に寄り添い、共感する力が求められます。
1-3.商談相手と決裁プロセスの違い
それでは次に、商談相手と決裁の流れの違いについて見ていきましょう。これは営業活動の進め方に大きく影響する重要なポイントです。
法人営業の場合、商談相手は専門知識を持った購買担当者であることが多く、商品知識や業界動向に関する深い理解が求められます。また、決裁プロセスは通常、担当者→部門長→役員といった具合に複数の承認が必要です。そのため、それぞれの決裁者が重視するポイントを理解し、段階に応じた提案内容の調整が必要となります。
一方、個人営業では商品に関する専門知識を持たないお客様が相手となります。しかし、これは簡単だということではありません。例えば、高額商品の場合、商品の価値をゼロから分かりやすく説明し、商品がもたらす具体的な未来の姿をイメージしてもらう必要があります。また、夫婦での購入の場合は、それぞれの価値観や決定基準が異なることもあり、両者の合意形成が重要になります。
1-4.営業スケジュールと働き方の違い
取引の性質の違いは、営業マンの働き方にも大きな影響を与えます。ここでは日々の業務スケジュールの違いについて解説していきます。
法人営業では、基本的に平日の日中が活動時間となります。商談はアポイントを取って先方のオフィスを訪問することが一般的で、計画的な営業活動が可能です。しかし、急な要望や問い合わせへの対応も求められるため、柔軟な時間管理能力が必要です。
対して個人営業では、お客様の都合に合わせた営業活動が基本となります。特に住宅や高額商品の営業では、お客様が仕事帰りの夜間や休日に商談することが多くなります。その分、平日の日中は商談の準備や情報収集、既存顧客のフォローなど、時間を有効に使うことができます。
このように、法人営業と個人営業では働き方に大きな違いがあります。しかし、どちらが楽でどちらが大変というわけではなく、それぞれの特性を活かした時間の使い方が成功のカギとなります。
2.見落としがちな本質的な違い
ここまで法人営業と個人営業の基本的な違いを見てきました。しかし、実は更に重要な違いがあります。30年の営業経験から見えてきた、成功の本質に関わる違いについてお伝えしていきましょう。
2-1.営業の成功パターンが異なる
法人営業と個人営業では、成功への道筋が大きく異なります。
法人営業の成功は、「小さな成功の積み重ね」が基本となります。最初は小規模な取引から始まり、実績を積み重ねることで取引規模を拡大していくのです。例えば、事務用品の納入から始まり、最終的にはオフィス移転の一括受注まで任せてもらえるような関係を築いていきます。この積み重ねの過程で、顧客企業の課題や業界知識も深く理解できるようになります。
一方、個人営業では「一期一会の商談で最高の提案をする」ことが重要です。特に高額商品の場合、お客様は複数の業者を比較検討しており、初回の商談で決断を下すことが多いのです。私の経験では、見込み客の9割は初回商談時に「この営業マンから買おう」という判断を下します。そのため、初回商談では万全の準備と最高の提案が必要不可欠なのです。
2-2.顧客との信頼関係の築き方が異なる
それぞれの営業における信頼関係の築き方も、実は大きく異なります。
法人営業では、「実績を積み重ねながら段階的に信頼を築く」ことが基本です。日々の小さな依頼に確実に応えることで信頼を積み上げ、それが次の大きな商談につながっていきます。例えば、急な納期変更への柔軟な対応や、細かな要望への丁寧な対応が、大きな信頼につながることがよくあります。
対して個人営業では、「最初の出会いで圧倒的な信頼を獲得する」ことが求められます。お客様は、その商品を一生に一度しか購入しないかもしれません。そのため、初回の商談で「この人から買いたい」と思っていただける信頼関係を築く必要があります。具体的には、商品知識の深さ、提案の的確さ、そしてお客様の本当の願いに寄り添う姿勢が重要になります。
2-3.必要な準備と知識が異なる
成功のパターンが異なれば、当然、必要な準備や知識も変わってきます。
法人営業で重要なのは、「業界と企業に関する深い理解」です。取引先の業界動向、競合他社の状況、さらには財務状況まで把握しておく必要があります。私が営業マネージャーとして若手を指導する際も、まずは業界研究から始めるよう指導しています。なぜなら、この知識があってこそ、相手企業にとって本当に価値のある提案ができるからです。
一方、個人営業で重要なのは、「商品知識と人生設計に関する理解」です。商品の細かい仕様だけでなく、その商品がお客様の人生にどのような価値をもたらすのかを具体的に説明できなければなりません。例えば住宅営業であれば、間取りや設備の知識はもちろん、教育費や老後の生活まで見据えた住宅ローンの組み方まで理解しておく必要があります。
3.成功する営業マンになるための攻略法
それでは、これまでの違いを踏まえた上で、具体的な成功への道筋をお伝えしていきます。営業は決して才能や運に左右される仕事ではありません。体系的に理解し、正しい方法で取り組めば、誰でも必ず成果を上げることができるのです。
3-1.法人営業で成果を上げる3つの鉄則
法人営業で成功するために、まず押さえておくべき3つの重要なポイントをお伝えします。
- 徹底的な情報収集と分析をする
- 投資効果(ROI)を具体的な数字で示す
- 長期的な関係構築を意識した提案を行う
それぞれ詳しく解説していきます。
【徹底的な情報収集と分析をする】
相手企業の業績推移、業界動向、競合他社の状況など、あらゆる角度から情報を集め、分析する必要があります。私の経験では、商談前の準備に時間をかけた営業マンほど、着実に成果を上げています。
【投資効果(ROI)を具体的な数字で示す】
法人営業における提案は、必ず企業にとっての利益につながることを示さなければなりません。「この設備を導入することで、年間の人件費を2000万円削減できます」といった具体的な数字での提案が、企業の意思決定を大きく後押しします。
【長期的な関係構築を意識した提案を行う】
目の前の商談だけでなく、その先にある取引拡大の可能性まで見据えた提案を心がけましょう。これにより、顧客企業との関係も深まり、より大きな商談へとつながっていくのです。
3-2.個人営業で成果を上げる3つの鉄則
個人営業で成果を上げるための3つの重要な要素をお伝えします。
- 初回商談での圧倒的な提案力
- 「共感」と「論理」のバランス
- スピーディーな提案と決断の促し
【初回商談での圧倒的な提案力】
個人営業の場合、特に高額商品では9割のお客様が初回商談で購入を決断します。そのため、商品知識はもちろん、お客様の理想の生活や将来の不安まで理解した上で、具体的な価値を提案できる力が必要です。
【「共感」と「論理」のバランス】
お客様の夢や不安に深く共感しながら、同時に具体的な数字やデータに基づく提案を行うことで、感情と理性の両面から購入の後押しをします。
【スピーディーな提案と決断の促し】
商談が長引けば長引くほど、契約の確率は下がっていきます。適切なタイミングで決断を促すスキルが、成約率を大きく左右するのです。
3-3.両方の営業に共通する成功の法則
法人営業と個人営業、それぞれに特徴はありますが、実は根本的な成功の法則は共通しています。
それは、「相手の真の課題を解決する」という本質的な価値提供です。法人営業であれば企業の業績向上や課題解決、個人営業であればお客様の理想の生活の実現や不安の解消。形は違えど、相手が本当に求めているものを提供できるかどうかが、最終的な成否を分けるのです。
そして、これは私が30年の営業経験で最も重要だと感じていることですが、「誠実さ」と「率直さ」は、どちらの営業でも必要不可欠です。できないことは「できない」とはっきり伝え、相手にとって本当に価値のある提案をする。この姿勢こそが、長期的な信頼関係を築く基礎となるのです。
4.営業の種類に悩む前にすべきこと
これまで法人営業と個人営業の違いや成功法則を見てきましたが、実は「どちらが自分に向いているか」を悩むこと自体が、成功への近道を遠ざけている可能性があります。ここからは、そもそも営業職として成功するために必要な考え方についてお伝えしていきます。
4-1.営業の本質を理解する
営業の種類を問わず、まず理解しておくべき重要な事実があります。それは、営業は「センス」や「コミュニケーション力」で決まる仕事ではないということです。
私は30年間、数千人の営業マンを見てきました。その経験から断言できるのは、営業は科学的なアプローチで成果が出せる仕事だということです。お客様の行動には必ずパターンがあり、成功する商談にも法則があります。例えば、高額商品の場合、9割のお客様は初回商談で判断を下します。これは偶然ではなく、人間の意思決定の仕組みに基づいた必然なのです。
重要なのは、「なぜその商品が必要なのか」という本質的な価値を理解し、それを相手に合わせた形で伝える技術です。この技術は、誰でも学び、身につけることができます。
4-2.自分の強みを活かせる営業スタイルを見つける
営業の本質を理解した上で、次に考えるべきは自分の強みの活かし方です。
営業マンには、それぞれ異なる強みがあります。論理的な説明が得意な人もいれば、共感力に優れている人もいます。大切なのは、その強みを活かせる営業スタイルを確立することです。
例えば、私が指導した営業マンの中に、とても几帳面な性格の方がいました。この方は最初、「営業は派手なパフォーマンスが必要」と思い込み、苦手な営業トークを無理に真似ようとして成果が上がりませんでした。しかし、その几帳面さを活かし、徹底的な情報収集と緻密な提案書作成に注力したところ、驚くほどの成果を上げるようになりました。大切なのは、他人の真似ではなく、自分の強みを最大限に活かす方法を見つけることなのです。
4-3.今の営業職で成果を出すための具体策
自分の強みが分かったら、いよいよ具体的な行動に移していきましょう。成功への道筋は、実はとてもシンプルです。
まずは、今の営業職で求められる成果を具体的な数字で把握します。例えば「月間の商談件数」「商談一件あたりの成約率」「一件あたりの平均単価」など、できるだけ細かく分解してみましょう。そうすることで、どの要素を改善すれば全体の成果が上がるのかが明確になります。
次に、その数字を達成するために必要な日々の行動を決めます。ルーティンワークとして毎日続けられる具体的な行動に落とし込むことが重要です。例えば「毎朝30分の業界ニュースのチェック」「商談前の1時間は必ず準備の時間に充てる」といった具合です。
そして最も重要なのが、その行動を確実に実行し、結果を記録することです。どんな行動がどんな結果につながったのか、データとして蓄積することで、自分なりの成功パターンが見えてきます。
私が30年の営業経験で確信を持って言えるのは、このように科学的なアプローチで取り組めば、必ず成果は上がるということです。営業は決して運や才能に左右される仕事ではありません。
おわりに
法人営業と個人営業、それぞれに特徴があり、一⾒すると全く異なる仕事のように⾒えます。しかし、本質的な部分では共通点があります。それは「相手の課題を解決し、価値を提供する」という点です。
重要なのは、今の自分に与えられた営業の場で、どれだけ真摯に取り組めるかということです。法人営業か個人営業かという枠組みにとらわれず、目の前のお客様に対して、いかに価値ある提案ができるかを考えていってください。
そして忘れないでください。営業は科学であり、再現性のある技術なのです。正しい知識と行動を積み重ねることで、必ず成果は付いてきます。この記事で得た知識を、ぜひ明日からの営業活動に活かしていってください。
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